短編

□好きじゃないだけ
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「―――…あぁそうだ」


横を歩いていた赤司が突然歩みを止める。
同じように立ち止まった黒子は少しだけ高い位置にある赤司の顔を見上げる。



「決勝と準決勝は出ないから」


あっさりと言われた言葉に微かに片眉を上げる。
今現在、二人がいるのは夏のI・Hの会場だ。
久しぶりに帰ってきた東京。
やはり都会は賑やかだなと思ったのは秘密だ。

そんな中、言われた言葉にただ呆れるだけ。

誰もが“優勝”という二文字を目指して精一杯やるなか、あっさりとこの目の前の男は放棄しようとしているのだ。
まぁ、赤司が出ないくらいで負けるようなチームではないが。

 
だけど―――…


「相手は紫原くんと青峰くんですよ。なに考えてるんですか、君」

呆れたような黒子の言葉に、赤司が興味なさ気に言う。

「敦にはもう言ったし、大輝は出ない―――…いや、“出れないよ”」


はぁ?と黒子の視線がそう問いかけてくる。
再び歩き出した赤司。
それに伴う黒子。

紫原はもう確実に出ないだろう。
赤司との対決を嫌がっているし、なにより紫原は赤司の言うことを必ず聞く。

 
だが青峰はなんだろうか。
そこまで考えて、ふと思い付く。


「…肘の故障、ですか…?」


だがそれだけで出なくなるだろうか。
むしろなんでもないことのように出てそうだが。


「さつきが気付いて止めるよ。心配性だからね」

「あぁ、そうですね」


あの有能なマネージャーが彼の傍にはいたんだったな。
そんなマネージャーに好かれていることをまったく自覚しないのはなぜだろうかと、不思議に思うのは赤司だけじゃないはずだ。



「ていうかそれに君と紫原くんが出ない理由になりませんよね」


はたと、大事なことに気が付いた黒子が問う。


「僕と敦だけじゃないよ」

「…?」

「テツヤもでしょ」 

 
なに言ってんだろうか、この人は。
ピタリと歩みを止めた黒子が、歩き続ける赤司の背を見返す。

止まる気配がないので黒子は足早に近づき隣に並ぶ。



「なんで僕もなんですか」

不満を隠さず、苛立ちも露に、言う。
そんな黒子を横目で確認して楽しげに笑った赤司。



「お前が“キセキの世代”だからだよ、テツヤ」


はぁ、と大きくため息をついた黒子。
いつも思うのだが、赤司は少々自分を買いかぶり過ぎではないだろうか。
そんな黒子の思考を見透かしたように赤司は言った。


 
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