携帯獸−Parody−
□白に落ちる赤
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「…つまりレッドは吸血鬼ってことか?」
その言葉にレッドは無言でコクンと頷く。
「じゃあ、コイツは自分の血を食べるため…?」
カッターを取り出しながら言うと、レッドの身体がビクッと跳ねる。
「………うん」
「でもそれって意味ないんじゃないか?自分の血なわけだし」
「……飲まないと、死んじゃうから」
未だに蒼白な顔でレッドは答える。
「……絶対、人の血は飲まないって決めてる」
「なんで?」
「……っ、僕はまだ人でいたいよ……」
「!!」
レッドが涙ぐみながら言った言葉にショックを受けた。
どんどん人じゃなくなっていく恐怖。
それがレッドに取ってどれ程怖いものか。
違うんだと、皆とは違えてしまう自分の欲求。
きっと俺だったら狂ってしまうだろう。
そして一番近くにいたはずなのに、縋られることも、気づいてあげることも、助けてと言われることもなかった。
今まで呑気に生きてきた自分に嫌気が差す。
暫く無言でいると、目の前でレッドの身体がグラっと揺れた。
「レッドっ」
「………っ」
レッドは息切れが激しく、目の焦点が合っていない。
「……っはぁ、は、はなして……」
俺の手を掴んでいるレッドの手は震えている。
レッドの身体はずり落ちるようにグリーンの腕から落ちていく。
死んでしまう。
レッドが目の前で。
もうあの控えめな笑顔も、意志の強い輝いている瞳も、見れなくなってしまう。
二人でいる時の幸せな時間でさえ、消えてしまう。
大切な、掛け替えのない親友。
いいや、それ以上の大好きな奴。
消えてしまう。
そんなの嫌だっ!
死なせてたまるか!!
俺は手に持っていたカッターを、ゆっくりと首筋に刃を当てる。
そこから溢れたのは自分の赤い血。
レッドの身体を抱え直すとレッドに呼びかけた。
「レッド」
「っ…っはぁ、…な、に…?」
「俺の血を、舐めろ」
「いや…っ!グリーンを『餌』にしたくない……っ」
『餌』……?
そのまま意味だろうか。
それよりレッドの命が危ない。
「『餌』でもなんでもいいっ!お前の命の方が大切だ!!」
それでもレッドはふるふると力なく首を振る。
無理やり膝の上にレッドを持ってくると顔を自分の首筋まで持っていった。
「……やっ」
「…駄目だっ!レッドが死んじまう!大丈夫だから!嫌いになんてならないから!レッドが吸血鬼でも何でも好きだからっ!」
涙ぐみながらレッドに密かに抱えている思いも一緒にぶつける。
レッドは虚ろな瞳から雫を零すと小さな声で呟いた。
「……ごめんなさい」
そうしてレッドは俺の首筋に触れた。