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□一人じゃないって気付いて下さい
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「アイツを頼む」



そう頼まれたからじゃない。

僕の意思で貴方を此処から出してあげたい。











「はじめまして!僕はヒビキ。貴方を倒しに来ました」


バクフーンを撫でながらレッドと呼ばれる人を見た。

雪に溶けそうなくらい真っ白の肌。

対称的な艶のある黒い髪。

何より印象に残るのは、燃えるように赤い瞳。

彼はモンスターボールを取り出しながら僕をその瞳に移す。


「始めようか」


悲しそうに、でも楽しそうに彼は笑った。











「……負けた」


そう呟くと彼は俯いた。


「…レッドさん?」


動かないレッドさんに僕は心配になって、走って近寄った。

彼は被っていた帽子の鍔を下げた。

グリーン先輩が言っていたのを思い出す。


「アイツが帽子の鍔を下げた時は何か見られたくない時だ」と。


帽子の下から雫がこぼれ落ちる。

あぁ、泣いているんだ。

彼は負けて、『最強』を失って、一人になった。

……そう思ってる。



「…レッドさん。聞いて下さい」



僕はレッドさんの手を握る。

暖かいと思った。



「貴方は一人じゃないです。
……気づいてあげて下さい。あの人はずっとレッドさん、貴方を待ってます」



グリーン先輩は待ってます。


トキワのジムでいつもこの山を見上げて。


僕は握っている手を強くする。


僕の想いが伝わりますように。





「――貴方の願いは何ですか?」





僕は貴方を助けたいんです。





「……っ、…いたい」





呟いた声は風に攫われて消える。


レッドさんはこぼれ落ちて止まらない涙を一生懸命拭っている。


その涙を拭うのは僕の役目じゃない。




「…助けて」




僕はその答えに柔らかな笑みを浮かべて手を握り返した。








「…おねがいっ。僕を、ここから連れ出して」







「はい」







その為に、僕は貴方を此処から連れ出します。







「アイツに逢いたいっ……」







――真っ白な山に住む赤い王様はようやく山を降りられた。


一人じゃないって気づいて下さい




end


*あとがき*
響君目線です。
こっちも「確かに恋だった」からお借りしました。
 

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