携帯獸−Novelette−
□サヨナラから始まる
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「あっちーな〜。これ以上暑くなってどうすんだよ‥‥」
階段を下りながら俺がだるそうにしながらぼやくが、隣にいるレッドはもっとだるそうだ。
まったくだ、と言うように息を吐き出す。
階段を降り終わると、自動販売機が3つ鎮座している。
「何買うかな‥‥。コーラかなぁ」
百円玉を入れると、う〜んと、顎に手を当てて少し見上げる。
「そう言えばレッドは何が好きなんだ?」
レッドはコーラを指すと、そのまま押した。
「って何やってんだよ!俺の金!」
テへっ☆とでもすれば可愛いものだが、相変わらずの無表情だ。
俺から見ればわかるが、少しだけ表情を緩めている。
「喋らないと会話にならないだろ!ほら喋ってしゃべっ…って逃げんなテメッ待てゴルァ!!」
来た道をコーラを持ったまま走っていくレッド。
べーっと舌を出して、走って行った。
「待てやコラァ!」
もう一度百円玉を入れて今度はサイダーを買う。
勢い良く振ると、ギリギリ室内に入りそうになったレッドに向けて栓を抜く。
「うおりゃあああ!」
綺麗に放物線を描いて透明な水は反射しながらレッドに飛んでいく。
「‥‥!」
すんでの所で避けると、足を止めたレッドを捕まえる。
「喋らねぇと会話になんねーだろうが!」
ぷぅと頬を膨らませて、いいじゃんか、と目で訴えかけてくる。
だから喋れっての。
言っても無駄か、レッドだし。
開いているサイダーを一口含んでから言う。
「まぁいいけどよ。奢るくらいなら。でも言えよ」
言うって表現は喋らねぇレッドに言うのもおかしい話だが。
コクンと頷いてレッドはコーラを俺に差し出す。
「どうしたんだ?‥‥え?飲めって?」
もう一度コクンと頷いて俺に渡すと、レッドはサイダーを手から引ったくって煽った。
コーラを見たら、もう開いている。
もう飲んだのかよ。ってか飲んでから渡すなっての。
俺もコーラを飲むと、炭酸が口の中ではじける。
「あ、」
これ、間接キスじゃね?
そう思ったら図らずも顔が赤くなった。
学校内自動販売機
五話 end