携帯獸−Novelette−

□サヨナラから始まる
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「なあなあ、お前しゃべんねぇの?」



始業式から次の日、後ろをむいてレッドに話しかける。

俺が関わってきた奴らの中で、一番無口で、一番綺麗な瞳をしていた。



「‥‥‥?」



なんで?と深紅の瞳が訴えてくる。



「必要性が見当たらないってか?」

「‥‥‥」



無言で返される。流石に一人でしゃべってる気分になる。

‥‥喉痛めてるとか。ほら、花粉症酷いっていうし。

ポケットを探ると、袋に包まれた二つの飴玉が入っていた。

そういえば、姉ちゃんに朝持たされたっけ。



「イチゴとマスカットどっちがいい?」



掌に出して聞くと、イチゴの方を指差す。



「ほらよ」



レッドの掌に乗せると、少しだけ顔を緩ませた。
無表情だったレッドの変化が嬉しくて、思わず笑みが零れる。

隠すように俺は残ったマスカットの袋を破って口の中に放り込んだ。

習ったようにレッドも袋を開けて、赤い飴玉を口の中に入れる。

下を向きながら、かなり小さい声でくぐもった声が聞こえる。



「何かぼそぼそ聞こえ‥‥もしかして喋ってたの!?」



なんだ喋ること出来んじゃん!

そういいながら黒い艶のある髪の毛をなでる。

レッドは俯いたまま真っ赤だ。

はっとなって慌てる。



「悪ぃ!高校生にもなって頭撫でるのは恥ずかしかったか‥‥」



レッドは慌ててぶんぶん首を振る。

別に嫌じゃないらしい。
そう思うと余計に声が聞いてみたい。



「決めた!」



どうしたの、と首を傾げるレッド。



「お前の声が聞いてみたい!」



ポケットに忍ばせた飴



三話 end
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