携帯獸−Novelette−

□サヨナラから始まる
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「なぁ喋って喋ってお前の声が聞きたいんだよー!」

「‥‥‥」

「あれ、起きてる?」



ようやく学校に落ち着いて来た5月。
未だにレッドは喋らない。



「いつになったら喋るかなー」



話しかける俺を余所にレッドは鞄から袋を取り出す。



「次体育か。レッド一緒に行こーぜ!」



俺も体操服の入った袋を取り出すと、レッドはコクンと頷いた。






「今日サッカーだってよ」



レッドは基本鈍そうに見えるけど、運動神経はいいらしい。

服のボタンを取りながら言ってみると、心なしかレッドは嬉しそうだ。

ふと首もとに違和感を覚えた。



「‥‥‥ない」



レッドがこっちに目を向ける。



「ペンダントが‥‥‥ない!」



脱ぎかけた服を着直して、更衣室を出る。

昔黒髪のアイツから貰った赤い石のペンダントはいつも首にかけていた。今日朝からしっかりつけてたはずなのに。

チェーンが老朽化して落としたのだろうか。

走っていたら、いきなりグンッと体重が傾く。
服を引っ張られたらしい。



「レッド!?」



服を引っ張ったのはレッドだった。



「どうしたんだよ、体育もう始まってんだろ?」



うん、と頷く。声には出してないが。



「いいのか、授業サボって」



またうん、と頷く。

レッドは俺の服を掴んだまま動かない。



「‥‥もしかして探すの手伝ってくれんの?」



さっきと変わらずうん、と頷いた。

大好きな体育を休んで来てくれたレッドにくすぐったいような嬉しいような感じがした。



「ありがとな」



そう言って頭を撫でると、相変わらず顔は真っ赤だ。

名残惜しいが、手を離して本題に入る。



「えっとな、5cmくらいで雫型なんだ。
色はそうだな‥‥レッドの目みたいに赤い」



そう、まるで夕焼けのような紅葉のような赤なんだ。

なんの石かは知らないけれど。



「別れて探してくれるか?
レッドは教室の方、俺は下駄箱から見てくるから」



コクン、と頷くとレッドは反対方向に走りだした。

俺も下駄箱の方向へ走り出した。






「全然見つかんねぇ‥‥!」



下駄箱から上がっていきながら、小声で叫ぶ。

今は授業中なため、叫ぶと先生に捕まるしな。

教室は最上階の三階、下駄箱は勿論一階だ。今は二階だ。



「あ、もしかして‥‥!」



落とし物ボックス見てねぇ!

ちなみにそれは、そのまんま落とし物があったら、そこに置くようになっている所だ。

二階にある落とし物ボックスは近い。

走って目に捉えると、反対方向から黒髪の生徒が走って来た。



「レッド!」



息を荒くしたレッドも目の前のボックスを見た。


「あ、あった‥‥!」



透明のボックスの中には赤いペンダントが入っていた。

すぐに俺は職員室に行って、担任に話しかける。
担任の松葉はあ〜、と言うと鍵を取ってきて、ボックスに行った。

レッドはまだそこに居て、突っ立っていた。



「あれレッド君も?はい、これ。でも授業抜けちゃ駄目だよ」



松葉の手から赤いペンダントが渡される。



「よ、よかった〜」



はぁ〜、と息を吐き出した。

やはりチェーンが切れていたらしい。



「‥‥余程大切なものなんだね」

「そうなんです!名前は覚えてねぇけど、大事な奴から貰ったもので‥‥」

「へぇ〜」



松葉はレッドをチラッと見ると、また俺に目線を戻す。



「それ、大事にしなよ。‥‥君の持ってる指輪もね」

「はい!」



とりあえず見つかってよかった!

でもなんで先生俺が指輪持ってんの知ってんだろ?



落とし物ボックス



四話 end
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