携帯獸−Novelette−
□サヨナラから始まる
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自室のカーテンを開けると眩しい朝日が俺に射す。
「ねむ‥‥っ」
窓を開けて携帯から鳴りだしたアラームを止めた。
「そういえば‥‥」
《寝起きが悪いんだ。朝昼は関係ないかも》
『だったらモーニングコールしてやろうか?』
なんて会話した気がする。
イタズラ半分で手早くメールを打つと笑みを浮かべながら、携帯を机に置いた。
直後外から受信のメロディのようなものが聞こえる。
気のせい‥‥か?
*
青空が広がる窓の外を見ながら、平和だなーと宛もないことを考えていた。
結局部活にも入らなかったし、かと言って家に帰っても暇だしなぁ。
俺はノートの端を大きめに破った。
シャーペンを握って何書こうと考えてると、後ろからツンツンと背中をつつかれた。
振り返るといるのは無論レッドで。
(ひ、ま)
口ぱくで俺に伝えるが、先生が俺達の方を向いて慌てて前を向いてシャーペンを握る。
さっき千切ったノートの端に手早くシャーペンを走らせると畳んで後ろに放った。
『暇だなー。なぁなぁ放課後どうする?』
『また教室でゲームする?』
俺達は揃って同じゲームに嵌っていた。
【ポケットモンスター】
ポケモンと呼ばれる動物みたいのを捕まえたり、育てたり、バトルしたりするゲームだ。
悔しいことにレッドに一度もバトルで勝ったことはないのだが。
『今日学校早めに閉めるらしいぜ』
『じゃあどうするの?』
この頃はゲームを持ち寄って学校でのんびりしていた。
『あ、そうだ今日俺ん家来ない?来る?よっしゃー決まり!じゃさっそく行こうぜ!』
『グリーン紙の上でも煩いんだね。勝手に決めないでよ。あと、まだ授業中だから行けないよ』
俺ん家は広いし、いつあがっても大丈夫だし。
『細かいことはいいんだよ』
キーンコーンカーンコーン‥‥。
「で、来るか?
否定ばっかしてたけど‥‥」
チャイムが鳴って礼をした後、レッドを見るとさっきのノートの端に綺麗な字で何か書いていた。
『行きたくないわけじゃないけじゃないけど‥‥』
「けど、なんだよ」
眉を寄せて(傍目からは無表情)いるレッドに問うと、また紙に書いた。
『僕が行ってもいいの‥‥?』
その質問に思わず固まってしまった。
行っていいも何も俺はレッドを誘ってるんだけど‥‥。
多少不安そうな顔(やっぱ傍目からは無表情)のレッドを見て笑いながら、その艶のある黒髪をかき混ぜるように撫で回した。
「俺が良いって言ってんだからいいんだよ!」
こっそり回した手紙
「グリーンのバーカ」
小声で呟いたレッドの声は俺には届かなかった。
七話 end