携帯獸−Novelette−

□君と出逢うために
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カントーとジョウトを挟むようにそびえ立つ極寒の雪山シロガネ山。

そこの傾斜をウィンディに乗って俺は走っていた。
吹雪が視界を遮り進みにくい。

そもそもなんで俺がこんな所を登っているかというと、三年前リーグから消えた幼馴染みレッドを捜すためだ。

前々からシロガネ山の噂は聞いていた。



『シロガネ山にトレーナーの幽霊が出る』



その情報を聞いたヒビキがトレーニングでシロガネ山に登った。

ヒビキは本当にトレーナーがいた、と豪語した。

そこまでは良かった。

しかしヒビキはそのトレーナーにすぐに倒されてしまったらしい。

それは残念だったなと話を聞いているとヒビキは言った。



『その人あんな寒い中半袖だったんですよ!』

『半袖!?』

『ちなみに赤い服着てました』



この情報だけで俺はわざわざ寒い中を突き進んでいる。



“赤”



その色はレッドを連想させた。

ジョウトのヒビキを打ち負かす程の実力。

バトルセンスが天賦ものだろうアイツしか思いつかなかった。

しばらく走っていると酷かった吹雪がおさまる。

俺はウィンディから降りて礼を言うとモンスターボールの中に戻した。

雪の積もった地面を踏みしめて歩くと、誰かの声がした。



「‥‥まさか!」



走りにくい地面を蹴って走ると赤い後ろ姿と普通の奴より一回り小さいピカチュウ。

間違いない。間違える筈がない。


レッドだ。


三年間ずっと捜し続けてきた。


立ち止まり息を整えるとその背中に向けて呼びかけた。


あぁ、本人に向かってこの名前を呼ぶのが随分懐かしく感じる。



「レッド!」



肩を揺らし振り返ったそいつは変わらない赤い瞳で俺を見た。



「‥‥グリーン‥?」



大きな目を見開き、固まってしまうレッド。

俺も三年ぶりに見るレッドを見て、言いたいことは山ほどあるが、何から言えばいいかわからずにいた。



「‥‥久しぶり」



その声で気が抜けた。

俺はふっと笑うとレッドを見る。



「久しぶり」



まずここからだ。





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