携帯獸―Main2―
□君はいつも空を切る
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「此処にもいない、かぁ‥‥」
チャンピオンロードの近くにある草むらを見る。
重たく鬱陶しい程に淀んだ曇天が空を覆う。
まるで俺の心のように。
今日と同じような空の日、アイツはいなくなった。
ただ一緒にいたかったたけだった。
それでも天邪鬼だった俺の心は辛辣な言葉しか吐くことが出来なくて。
素直になれなかった俺の言葉を真っ直ぐなアイツは信じてしまった。
何度だって手を伸ばした。
助け、元気づけ、時には叱咤するための手でさえ。
‥‥本当は俺が欲しがっていたんだ。
優しい頭を撫でる手を。
俺は俺だと信じて引っ張ってくれる手を。
――…俺を愛してくれる手を。
もうアイツは此処にはいない。
手を伸ばしたって届かない。
「何で‥‥っ。何でいないんだよレッド‥‥っ!」
滲んだ視界にアイツが映ることはもう、ない。
君はいつも空を切る
大好きだったお前はいつだって手が届かない。
end