携帯獸−Parody−
□白に落ちる赤
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チキチキっと手元でカッターが鳴る。
出てきたのは鋭利な刃物。
それを普段リストバンドで隠れている所に当てる。
それだけで空腹感でくらっと来てしまう。
手首から滴るのは赤く濁った己の血――…。
*
カントー最高峰のシロガネ山の頂点。
いつも真っ白な雪と灰色の空しかない場所。
今日も俺はそこに向かっていた。
頂に登るといつも挑戦者を待つレッド。
それがいつも見ている光景だった。
「レッド〜?」
呼ぶといつもは返事はするのに今日は返事が返って来ない。
不安に思いつつもいつもの仮宿に向かった。
足元でカシャっと音が鳴る。
そこには真っ白な雪の上についている赤黒いものと
「カッター……?」
赤黒いものは血であることは確かだ。
カッターには血痕が付着している。
「……っ!レッド!!」
そいつを持って俺はその場から駆け出した。
*
驚いた。
まさか、途中でグリーンが来るとは思わなかったから。
走って逃げたせいか、舐める量が足りなかったせいか、息が整わなくて思わず雪に膝がつく。
ぐらっと来て、やばい、と思った時には僕の意識は落ちていった。
*
辺りを走って回ると、仮宿から近い所にレッドはいた。
そのレッドは真っ白な雪の上に倒れていた。
「レッドっ!!」
慌てて身体を起こすとあまりにもその身体は、冷たい。
顔色も雪に劣らないくらい真っ白だった。
片方の腕を取ると、手首からは血が流れていた。
「……っ。とりあえず運ばねーと」
体温の低いレッドに自分の体温を移すように強く抱き締めた。