携帯獸−Main−
□僕の代わりに、
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突然、その時はやって来た。
僕を産み落としてくれた母が、
大きな手で撫でてくろた父が、
めい一杯愛してくれた両親が、死んだ。
事故だったらしい。
研究の帰り事故にあって帰らぬ人になった。
僕は泣けなくなった。
*
「シゲル…!」
サトシが心配そうに走ってくる。
あぁ、彼を心配させちゃいけない。
今日、両親は煙になって空に帰っていった。
僕を、置いて。
涙は出て来ない。
認めたくないんだ。
悲しいはずなのに水滴のひとつすら出て来ない。
「サトシ…?」
顔を上げると彼は泣いていた。
「どうして泣いてるんだい?」
そう聞くと、サトシは余計に綺麗な雫をこぼた。
「シゲルが泣かないから、俺が泣くんだ」
僕は震える身体で彼を抱き締めるしか出来なかった。
僕の代わりに、君が泣く
泣きたくても涙が出て来ないんだ
end
*あとがき*
悲しみのあまり涙が出ない茂と泣かない茂に悲しくなって泣いてしまう智。
お題:「確かに恋だった」より