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□世界で二人きりは寂しい、なんて
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「もし、世界が僕とグリーンだけだったら?」


書類の文字を追いながら、ベッドに寝っ転がっているレッドに耳を傾ける。


「どうした、レッド」

「もしね、僕とグリーンだけの世界だったら僕はチャンピオンになんてならなかったと思うの」


枕をギュッと抱き締めて顔を埋めている。
今日のレッドはやたらと饒舌だ。


「それに、ずっとグリーンと一緒にいられたと思うんだ」

「でもレッドと一緒にいられるのなら、二人きりでもいいかもな」


俺がそう言うと、レッドはふるふると首を振る。そのたび柔らかな黒髪がパサパサと音を立てる。

「それでも世界で二人きりは寂しいよね」

「‥‥‥?」


書類を置いて、レッドの近くに座る。

二人分の体重を受けて、ベッドのスプリングが軋む。


「グリーンも僕も両親がいなかったらいなかっただろうし、仲間達とも逢うこともなかった」

「ヒビキやコトネ、シルバーと出逢うこともなかったし、」


顔を近づけると、レッドの白い頬に朱がさす。
顎に手を当てて、上を向かせてから軽く口付ける。


「お前とこんな関係になることはなかったよな」

ギュウっと抱き締めてると、ウリウリと腕の中で頭を俺の胸に押し付ける。

若干くぐもった声でレッドは呟いた。


「グリーンと出逢うこともなかった」

「前提から外れてんじゃん」


ユルユルと腰に手を回される。


「僕はこの世界で君と出逢えて良かった」

「俺もだよ」


抱き締めている体温が暖かい。
これでさえ、世界が与えたものだけれど。


「愛してる」

「‥‥うん。僕もだよ」

大好き、愛してる。



世界で二人きりは寂しい、なんて



end
*あとがき*
title.「空とぶ5つの方法」より
擬音を使いたかっただけ。
 

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