携帯獸−Main−
□太陽と月の狭間で―番外編―
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※シゲル目線
結局あの後、シオンタウンのポケモンセンターに泊まった。
「シゲル‥‥!起きろって!」
夜中寝入っていた僕を無理やり起こしたのはサトシで酷く焦燥していた。
「…どうしたんだい?」
目を擦りながら答えるとサトシは持ち前の馬鹿力で僕を立たせて、部屋を出る。
サトシは泣きそうな顔をしたまま叫んだ。
「エーフィが‥‥!」
その先の言葉に僕は息を飲み、意識がはっきりと覚醒した。
*
連れて来られたのはセンター内の治療室。
そこの寝台の上にエーフィが寝かされている。
「エーフィ!」
僕が呼びかけると閉じていたアメジストの瞳をうっすら開く。
「しっかりしろ!」
「ふぃ‥‥」
弱々しく鳴くと、額の赤い石が発光し、僕は目を閉じた。
目を再び開くと、そこは月明かりの射す両親の墓前だった。
どうやらテレポートされたらしい。
隣にはサトシも居て、エーフィを抱えている。
涙を流しながらエーフィを抱き締めた。
「ふぃー‥‥」
サトシの涙を舌で舐めて拭ってやると、腕から降りようとしているのか足を動かした。
意味を読み取ったサトシは墓前にエーフィをゆっくり下ろした。
しゃがんで僕は綺麗な紫の毛を撫でてやると、エーフィは目を細める。
「お疲れ様、エーフィ」
僕がそういうと、エーフィは眠るように目を閉じた。
きっとエーフィはとっくに寿命が来ていたのだろう。
でも僕が両親の死を受け止めることが出来なかったから安心して逝くことが出来なかったのだろうだ。
「ありがとう」
夜の帳が開け、朝日が辺りを照らし始めた。
end