携帯獸−Main−
□どうかよい夢を
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何か寂しい夢を見たような気がしてふと意識が浮上する。
カーテンの隙間から覗ける空はまだ暗く、時計の針は丑三つ時を指していて、前髪をくしゃっとかき上げる。
肩に僅かな重みを感じてそういえばレッドと寝たんだっけと思い出す。
レッドに目を向けた途端、俺は何となく寂しい夢を思い出したような気がした。
「レッド‥‥」
蚊の鳴くような声で呟くとレッドは苦しそうに眉をひそめた。
頬に触れて見ると僅かに濡れていて今もとめどなく閉じた瞼から涙が零れ続けていた。
控えめに服を握った拳は震えて、俺はレッドを起こそうと肺ある空気を吸った。
『グリーン知ってる?
夢をみてる人を無闇に起こしちゃ駄目なんだって』
アイツ自身の声が俺の脳裏に響く。アイツは理由は言ってくれなかったけど、な。
結局吸い込んだ息は吐き出すだけで終わった。
俺はレッドを起こさないようにゆっくり抱き締めた。俺よりも低い体温が気持ち良くて思わず頬を緩ませる。
レッドは何の夢を見ているんだろうか。
泣く程つらい悲しい夢なのだろうか。
艶のある黒髪を指に絡ませるように撫でる。
俺はお前に何をしてやれるんだろう。
こんな時最強のジムリーダーと言われようと、オーキド博士の孫だと言われようと何にも出来ないんだ。
髪にキスをすると俺は抱き締める力を僅かに強めた。
結局俺はお前にしてやれることなんて少ない。
だけど傍にはいるよ。
ずっと一緒にいるから
「お休みレッド」
どうかよい夢を
せめて俺がいると気づいて