守りたいモノ

□最終章:そして、涙を流した
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魔界が崩れていく中、彼女自身が泣き崩れてしまいそうであった。
それでも、泣き崩れることはなかった。
何故ならば、彼女の守護者たちは清々しい程にすっきりとした表情をしており、たくましく感じられた。
そのおかげなのか、彼女は笑顔で彼らを送りたいと思ったのである。

祠の前に並んだ三人、紅と蒼はのんきにいつも通りの幼げな笑顔を見せながら、手を振ってみせた。
翠は「では…」とまた今度、とでも続きそうにさらりと挨拶を軽く言ってのけた。
それに対して、狛は悲しそうに小さく微笑んだ。
黒玄は軽く手を挙げて、「じゃあな。」とにやりと彼らしい笑みと言葉を送った。
サリアは何を言うわけでもなく、ただ彼らを見守った。
しかし、口元だけを動かした、"大丈夫、任せろ"と。
そんな彼女の言葉が伝わったのか、翠は小さく頷いた。

そして、ジュリアは先ほどまでの涙をごしごしと目元が赤くなるまで擦ると、ふぅ、と息を吐き出した。
そして、鈴、玉、刀を光が強くなった時、

「いってらっしゃい!」

と大きなジュリアの声と共に三人の満面の笑みが見えた後、一瞬にしてそこから散って消えた。

三人の散った後には赤、青、緑の羽が残り、風に流されて舞い上がった。

そこに残ったジュリアは少し困ったような、泣きそうな笑みを浮かべた。
そして、サリア、狛、黒玄、それから、シュナンへと視線を移した。



紺の塔を中心に崩れ始めていた魔界は崩壊が止まり、徐々に光が注いでいた。
空は青空が広がり、暖かな太陽な光と共に虹が薄らと空にかかっていた。




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