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□貴方を夢見ながら眠るの
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「ひっじかたさーん!って、いない…」

暇を持て余して訪れた部屋には主の姿はなく、煙草の残り香だけが置いていかれていた。

「もう、お仕事サボってどこに行ったんですか」

文机の上に積み重なった書類。
行き場所なんてきっと頓所内の何処か。
行き詰まった仕事の息抜きにきっと趣味の句でも詠んでいるのだろう。
そこまで察しても探しにはいかない。
せっかく部屋に来たのに目的の人物がいなくて、その上その人を探さなきゃいけないなんて何だか癪だから。
いない事がちょっとばかり腹立たしくて、嗅ぎ慣れた匂いがする部屋の真ん中にごろんと転がった。

「(早く戻ってきて下さい……)」

会いたいのに。
話したいのに。
触れたいのに。

「何でいないんですか……」

一人だけの部屋での呟きに何だか妙に淋しくなって、ギュッと目を閉じた。
瞼の裏に浮かぶ仏頂面の愛しい人。
早くしないと私寝ちゃいますからね、そんな事を思いながらまるで拗ねた子供のようにふて寝を決め込んだ。



目が覚めたら貴方がいますように──微睡みの中、総司、と低い声で優しく呼ばれた気がした。






土方さんには特別甘えた

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