漂う甘い香りにイタクはすんと鼻を鳴らした。
「……お前、甘い匂いすんな」
「え?」
廊下ですれ違い様に突然そう言われ、首無は足を止めてイタクを見た。
流石は獣の妖怪。
人型でも鼻は利くんだな──と感心しながら「ああ」と口を開く。
「さっきバニラのアイスを食べたから、それかな」
「ふーん…」
聞いた割には薄い反応。
聞いてきたのはそっちなのに、と思うも続かなさそうな会話に、じゃあねと背を向けようとしたがそれは敵わなかった。
腕を捕まれ、行動を阻むイタクの意図が分からずに首無は戸惑いの色を見せる。
イタク?、名前を呼んで見上げた先の彼は薄い笑みを浮かべていた。
その顔に嫌な予感しかしなくて、仕事が残ってるからと適当な事を言って解放してもらおうとしたがやはりそれも敵わない。
「美味そうだな」
「え、っ!」
唐突に唇に触れた唇。
軽く口づけた後、ぺろりと柔らかなそこを一舐めすると呆然とする首無にイタクは愉しそうに笑った。
「ごちそーさん」
香るバニラに口づけを
甘いお前を食べたくなったと獣が囁く。
イタ首が熱いです