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□ひ・み・つ・ご・と
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「…………………はい?」

いきなり自室に押しかけて来た一つ上の先輩方四人に驚く間もなく「今晩こいつを頼む」と言われ、俺の頭は軽くパニックを起こした。

「私は今から体育委員会で裏々山までマラソンに行かなくてはいけない」
「私は会計委員会で夜間鍛練」
「僕も委員会で火薬の点検」
「………だから…?」

先輩相手にこの言い方も失礼かとも思ったがそこは大目に見ていただきたい。
だって本当に訳が分からないのだから。
助けを求めて一番親しい先輩を見るも我関せずといったように俺には一瞥もくれない。
何とも薄情な先輩を持ったものだ。

「布団は後から持ってくるからな」
「朝も任せたぞ。引きずってでも連れて来てくれ」
「ごめんね綾ちゃん。僕がいてあげられればよかったんだけど…」
「ちょっと待ってください!勝手に話を進められても困りますっ」

絶対に厄介事を押し付けられるに違いない(俗にいう被害者)俺をそっちのけで三人で盛り上がる先輩方に待ったをかけるが、どうやらこの人達の中では既に決定事項のようである。
証拠に、何言ってんだお前という目が俺に向けられる。
あんた達こそ何言ってんですかだよ。

「俺に何をさせる気ですか?」
「何って決まっているだろう」
「私達が委員会で部屋を空けるんだからお前しかいないんだぞ」
「今晩綾ちゃんの事よろしくね」
「………はぁぁぁ!!!???」
「これで安心だな」
「立花先輩が任務でいないからどうしようかと思ったけど、頼んだぞ浦風」
「他の上級生は危険だしねー。綾ちゃん襲われちゃう」

こっちの意見なんかガン無視で、満足したのやら安心したのやら勝手に来て勝手に帰っていく過保護な自己中三人の背中を何も言えぬまま見送る。
遠ざかる足音、それを待っていたかのように二人きりになった部屋でこれまで一言も話さなかった綾部先輩が漸く口を開いた。

「本当は一番有害なのにね」
「……それあの人達には黙っててくださいよ」

勘違いしたのはあちら。
勝手に無害と決め付けて、狼に羊を差し出した。

「今夜は寝かさないよ、とーない」
「それは俺の台詞です」



取りあえずまだ死にたくはないから、もう少しだけ逢い引きを続けよう。






無害だと勝手に認識されてる藤内だけど既に綾部に色々してます。
世話焼き藤内も好きだけど狼なのもGJ!


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