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□幸せ以外になれやしない
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「あげます」

唐突に差し出された両手。
何かを大事そうに包み込んでいるそれは残念ながら何が入っているのかまでは分からない。
反射的に受け取る為に出した両手に一回り小さな綾ちゃんの手が乗る。
ゆっくり解かれる両の手に一体何が入っているのだろうかと見つめるが、僕の手の平には何かが現れる気配が一向に感じられない。
そして当然ながら感触もなし。

「えーと、綾ちゃん……?」
「はい」
「あのさ…何もない、よね?」

綾ちゃんの手は完全に僕の手の平から退いているにも関わらず、やはりそこには何もない。
念のため年下の同級生に確認するも平静な表情からは何も掴めず仕舞い。
あ、もしかしたら肉眼で捕らえる事も難しい位小さいものなのかも。
これ以上ないってくらいまじまじと自分の手を観察するがそこにはやっぱり何もなくて、右手よりも左手の方が生命線が長いって事しか結局分からなかった。

「タカ丸さんにおすそ分けです」
「え、おすそ分け?何を?」

僕には見えないがやっぱりここには何かあるらしい。
それが何かを聞く僕に綾ちゃんは変わらず平淡な口調で告げる。

「幸せです」
「ん?…え?幸せ?」
「そうです。幸せのおすそ分けです」

あ、そっか。
だから目に見えないのか。
うん、ちょっと納得。

「溜息をつくと幸せは逃げるそうです。その逃げた幸せを捕まえましたのでタカ丸さんに差し上げます」

幸せが増えましたよ、とそう言う綾ちゃんの今までの一見不可思議な行動が全て繋がった。
そっかそっか。
そうすると今この手の中にある幸せは元は綾ちゃんの幸せという事で僕はそれを頂いたって事になるんだ。
綾ちゃんの幸せは僕の幸せ。
本当に言葉通りのその行動が凄く嬉しくて手の中の幸せを思いきり飲み込んだ。

「僕今すっごい幸せかも!」



溜息をつくと幸せは逃げるけど、笑顔になると幸せは増えるんだよ。
僕の笑顔の理由は綾ちゃんなんだって言ったら、きみはどんな顔をする?






タカ綾ってまじ可愛い!

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