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□眩う
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「…………何してんだ?」

この泥まみれの後輩の奇天烈な行動は何も今に始まった訳ではないが、毎回毎回対応というか反応に困る。
今も人の姿を見るやいなや泥だらけで汚れているにも関わらず、大きな猫目をその手で覆い隠してしまった。

「先輩知らないんですか?」
「何が?」
「お天道様を直接見ると目が潰れちゃうんですよ」

いや、知ってるけど…それがなぜ今関係する?
しかも今日曇りだし。
まあ、分厚い雲に隠れて見えないだけでその遥か上空に太陽は確かにある。
逃げた毒虫を捕まえに走っていたはずが厄介な事になってしまった。
無視してもいいが、どうにもこいつを無下に扱えないのは所属している委員会が委員会だからだろう(作法に逆らう可からず、と本能が訴えている)。
どっちにしろ話を最後まで付き合う以外の選択肢は残念ながらない。
どう返したものかと薄ら笑いを浮かべる俺を気にもせず(あ、見えてねぇか)、「先輩は」と喜八郎が言葉を続ける。

「きらきらしてます。眩しくてちゃんと見てられなくて目を暝ってしまいます。お天道様と同じです」

変わらず手で目を覆ったまま、抑揚のない声でそう告げた後輩に目を丸くした。
太陽と同じ、だなんて忍として生きる俺達には不要なものなんだろうが、普段何を考えているのか分からない喜八郎がそう思っていてくれていた事がただ純粋に嬉しかった。

「ありがとな」

そっと汚れた手を退けて、灰色がかった桃色の頭をくしゃりと撫でれば今日初めて色素の薄いそいつの目に俺の顔が映った。



ふわふわのこいつの髪はきっと太陽の匂いがするのだろう。






竹谷は太陽ってお話

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