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□自惚れる
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作法委員会の後輩である綾部喜八郎は人の名前を覚えるのが苦手である、というよりもあまり他人に関心を示さない。
そのため交友関係も極めて狭いのだが、彼の学年は学園きっての個性派揃いだ。
周りの人間も我が道を行くタイプの者ばかりなので、まあ特に問題は発生しない。
話は脱線したが、要するに何が言いたいのかというとそれは冒頭に戻る。
人の名前を覚える事が苦手で尚且つ他人に関心を持たないとなると、自分にあまり関わりがない人間の名前は疎か顔すら定かではないという事だ。
現に一年は委員会の後輩笹山兵太夫と黒門伝七、三年は同じく委員会の後輩浦風藤内の事しか認識はない。
五年は流石にある程度知っているらしく「鉢屋三郎」とフルネームで名前を上げていた(それでも結局鉢屋一人だけ)が、二年にいたっては全くの無知である。
最上級生の我ら六年に対しても認識の低さは酷い有様だ。

「小平太は七松先輩、下の名前は知らないらしい。逆に長次は苗字が分からないと言っていた。文次郎に関してはもんじ…?と疑問形だ。留三郎なんかは酷かったな。しょくまん、と音読みだ」
「……本当に酷いね…(僕なんかきっと不運先輩くらいの認識しかないんだろうな…)」
「まあ私の場合は別だがな」
「そりゃあ一番親しい先輩だから」
「伊作の事も言えていたぞ」
「………え?な、何て!?」
「善法寺伊作先輩、と」
「ええええ!!??ほ、本当に!?何で!?」
「私も不思議に思って理由を尋ねたら好きだからと言っていた」
「ちょっ!!??も、もう一回言って!!!!」
「好きだから、と喜八郎が言っていたぞ伊作の事を」
「すっ…!!!???」
「よかったではないか伊作」



「(落とし穴の落ち方が芸術的で)何でも一番らしいからな」

真っ赤に顔を染め、心底嬉しそうな表情をする級友に笑いが止まらなくなりそうだ。






仙様は意図的に言葉足らず。
綾ちゃんは名前を覚えるのが苦手というより顔と名前が一致しなくて首を傾げてると可愛い。
別に物覚え悪いとかじゃなくて。


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