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□寂しがる
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ひどく閑散と感じる長屋は、今日が休日で街に遊びに行ってる者や自主練に出かける連中が多いからというだけではない。

「……暇だ」

空しいかな誰に拾われることもない呟きは静かな部屋に消えていった。
雷蔵は朝早くから学園長のおつかい、ハチは逃げた毒虫の捜索、い組は一昨日から実習。
つまらないつまらないつまらない。
どうして私だけ何もないんだ。
私も一緒に行く!と雷蔵に言ったが「三郎はここ三日忍務でほとんど寝てなんだからゆっくり休んでいな」と穏やかな笑顔で気遣われてしまえば渋々ながら従わざるおえない。
ハチはすぐに戻るとか言っておきながらちっとも戻ってこないし。
兵助と勘右ヱ門は早くても日が落ちた頃になるだろう。
いやだいやだおもしろくない。
机の上の教科書を開く気も、ぽかぽか陽気の中で昼寝をする気も、誰かに悪戯する気も起きない。
遠くで聞こえる下級生の声にこの場所がより一層ひっそりとしたものに思えて、まるで自分一人だけが世界から取り残されたような錯覚にすら陥る。
やっぱり無理矢理でも雷蔵について行けばよかった。
ハチはムカつくから今度あいつの顔で安藤先生にアブラムシ!と言ってやろう。
あとくのいち教室にも侵入してやるか。
人の事を放っておいたんだから恐ろしい報復を受ければいいんだあんな奴。

「………………ばーか」

なんて味気ない世界。
何もないところに私だけ置いてきぼり。

「…早く帰ってこい……」

ぎゅっと目をつむって遮断した世界から、静かな足音と感じ慣れた気配がした。

「三郎」

さみしがりやの国

遅いばかっ!
急速に色のついた世界に思いきり悪態をついた。






トリノコシティは三郎ソング!って言いたいんだよ。竹谷と絡んでないって罠。

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