リレー小説(その三)

□Knight×Laurentia!
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Side フィア







剣を向けた。

向こうも、剣を抜くと思った。

回りに被害が行かないように、気をつけなくては。

そう考えていたのに。

目の前にいるシュペーアは、そうしなくて。





―― 何がしたい。




目的が、見えない。

躊躇う。躊躇う。

この剣は、どこに向ければいい?

この剣は……






ヒトラー様を殺めることが出来たらそれでよかったと、シュペーアは言う。

その表情は、どこか、苦しげで。

哀しげで。

剣を向けていることを、躊躇う。




―― どうして。




どうして?

どうして、ヒトラー様を?

お前は、何がしたいんだ?




純粋な、憎悪や嫉妬、そういう醜い感情から命を狙ったというのなら、俺は躊躇わず彼に斬りかかれた。

でも、そうじゃないんだ。

シュペーアが、そうしようとした理由は、そんなちゃちなものじゃない。

だから、だからこそ。



―― どうしたらいいか、わからない。



この剣を彼に向けているのは、正しいことなのか?

彼がヒトラー様を殺そうとしたのは、事実だ。

でも、その理由は……?






アルが、ヒトラー様を治療している。

どうやら、命に別状はなさそうだ。

相変わらずに、魔力が弱いのは、俺たちにはどうしようもないことなんだけど。

そこに、ルカがきた。

何が起きた?とたずねたあと、俺たちの様子を見て、スッと目を細める。

あいつは、ああ見えて状況把握能力はなかなか高い。

「……どういうことだ」

それでもあえて問うのは。


―― 答えを、直接聞きたいから。


間違いであってくれと祈る気持ちと、仲間を無駄に疑いたくないという、その気持ちと。

彼のルビーレッドの瞳を見つめたあと、俺は静かに剣を下ろした。



 
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