リレー小説(その三)

□Knight×Laurentia!
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Side フィア





"いやだ"

シュペーアの口からつむがれた、弱い弱い声。

それが、彼の本当の気持ちで。

その声の弱弱しさに、彼が自分のしたことを悔いているのがよくわかった。

彼は、彼は。



―― 本当は、こんなことしたくなかった。



ただただ。

ヒトラー様のことが、大好きだっただけで。

それがわかったから、俺はほっとする。




―― それならいいんだ。



だって。

本当の恨みから、ヒトラー様を殺そうと思ったんじゃなければ。

きっと、きっと。

ヒトラー様は、わかってくれる。

お前のことを、叱るかもしれない。

だけど、きっと。

あの人は、優しいから。

だから。




――  お前を、侮蔑するような真似は、しないだろう?




"死なないで"と、シュペーアが言う。

苦しげに、彼を呼ぶヒトラー様の声。

こらえていた涙をこぼして、シュペーアはヒトラー様を見ている。

ヒトラー様は優しく、優しく、彼に声をかける。

ほら、こんな動作ひとつにだって。

ヒトラー様の優しさが、出ているんだから。






俺たちがえらそうに言えることじゃないかもしれない。

だけど、言わせてもらおう。

俺たち、雪狼の騎士は、ほかのどんな部隊よりも、絆が強いといわれる。

だからこそ、総合任務に就けるんだ。

そんな俺たちが、保証する。

お前たちは、俺たち以上に強い絆で結ばれてる。

そう簡単に、壊れたりしないよ。








シュペーアは泣いている。

ヒトラー様は、それを慰めている。

目もほとんど見えていないようなのに。

毒を口にして、体力だって失われているはずなのに。

ただでさえ、削られた魔力に苦しんでいるはずなのに。

それでも、それでも。



―― 仲間に、優しい笑顔を向けている。



そんな彼を、俺は改めて尊敬した。




 
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