リレー小説(その六)

□Knight×Laurentia!
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Side ルカ






「はぁぁ……」

深々と、溜息をつく。

今現在俺たちがいるのは、草鹿の病室。

運んできたヒトラーとクビツェクは、いまだベッドで眠ったまま。

アル曰く、

「すぐに目を覚ましますよ。そうしても、あまり細かく事情をせっつくのはなしにしてくださいね」

らしいが……


―― 事情、なんて。


正直、どうでもいい。

起きてしまったことをいまさら色々聞いたって、どうしようもないし、

それがヒトラーの心をえぐるようなことになりそうってのは、いくら鈍い俺でもわかるから。

だから、目を覚ましたところで、何かを機器だすつもりはない。



―― ……心配かけやがって、と文句のひとつくらいは、言ってやるかもしれないけどさ。



無事だったんなら(いや、全くの無事とは言いがたい気がするんだけど)構わない。

シュペーアたちは、何でヒトラーが急に取り乱したのか、理解したっぽかったが(手紙見て、納得した顔をしていた)

残念ながら、俺には理解できない。

でも、別にそれは構わないんだ。

重要なのは、ヒトラーもクビツェクも、フィアも、無事で戻ってきたこと。

だけど、俺たちが何にもできなかったというのは、やっぱり悔しくて。

守れないという虚無感に、普段はやらない煙草にでも手を出してやろうかと、自棄な気持ちにさえなる。

いや、それはジェイドからの説教が怖そうだから、やめておくけど。




さっきから、アルがこちらの部屋と、隣の部屋……フィアのいるであろう部屋を行ったりきたりしている。

シストは、さっきからこっちの部屋に戻ってこない。

俺が、向こうの部屋に行こうとすると、アルが笑顔でやんわり止める。



―― ルカ様は、ここにいてください。フィアは、大丈夫ですから。



……んだよ。俺が取りみだすとでも思ってんのか?

そんなに脆くはねぇよ。

あいつは、今までにだって何度も何度も怪我をしたり、危険な目に遭ってるし、

あいつじゃなくても、怪我をする人間はここのところ多いし。

そんなにすぐ取り乱したりはしない。

ただ。心配は、してる。

何も手につかなくて、さっきから声をかけられたって曖昧な返事しか返せないのも事実。

……あぁ、くそ。もっと俺に力があればな。





そんなどうしようもないことを考えていたら、病室のドアが開いた。

そこに立っていたのは、スターリンで。

「……お帰り」

俺は、笑顔を向けて、手を振った。何だこの笑顔。自分自身が良くわからねぇ。何のための笑みだ?

おそらく、誰かが呼んだんだろう。

ベッドで眠っているヒトラーたちを一瞥して、やや顔をしかめると、スターリンは俺たちに問うた。

「何があったのか、説明して欲しいのだよ」

「……ちょっと憶測はいるが、それで構わなければ」

"憶測"といったって、ほとんど確信だけど、事実を知る人間が、今は皆寝てるからな。

俺は、事情を説明した。




 
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