リレー小説(その六)
□Knight×Laurentia!
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人数分の紅茶を入れてから、僕はフィアの隣に戻った。
「はい、じゃあいただきます」
「……いただきます」
僕の様子を見て、フィアはくすくすと笑った。
何で笑うの?
「可愛い、とおもって」
「……むぅ」
フィアに言われると反論できないから困るんだ。
フィアが僕に言う"可愛い"は冗談やからかいじゃないらしいって、わかってるから。
だから深く突っ込むことなくクビツェクさんのナッツパイを食べた。
「おいしい!」
甘いもの大好きだから、こういうものは大好きなんだけど、
本当に美味しい。
「そう?ありがとう」
笑顔で言うクビツェクさん。
たぶん、ヒトラー様の好物だから、作ってるうちにうまくなったんだろうな、なんて思いながら、パイを口に運ぶ。
フィアも"うまい"といっていた。
「…………」
紅茶のカップを傾けるフィアをじっと見つめた。
「……ん?どうか、したか?」
きょとんとして僕のほうを見るフィア。
僕は首をふって、言った。
「フィアってやっぱり女の子なんだなぁ、って」
僕の言葉にフィアがむせた。
「ちょっと、大丈夫?」
「いや、おい……今のはどう考えても、アルの所為だぞ」
カップを置きながら、フィアは息をついて、呆れたように僕を見た。
「何をいきなり」
「うん?ちょっとしたしぐさとか、雰囲気。誤魔化しきれないんじゃないかなぁって……」
もって生まれた気品というか、なんと言うか。
カップの持ち方とか、そういうのに女性らしさが出てる。
「……騎士なんだから、作法はしっかりしなきゃ駄目だろう。
俺じゃなくて、クビツェクやヒトラー様だって、しっかりしてるじゃないか」
二人のほうに視線を投げて、フィアが言う。
僕もそちらを見る。
きょとんとした目で僕を見る二人になんでもないです、と首をふって見せて、フィアに向き直った。
確かに、二人も作法に関しては完璧だと思う。
けれど……
「やっぱり、少し違うもん」
「どこら辺が?」
「どこか、すっごく小さいところ」
「……わけがわからない」
フィアは肩をすくめて、カップを傾けた。
「……俺自身が、自分が女だということを忘れかけているから、そういうことを言われると戸惑うんだが」
確かに、フィアは騎士団に入ってから(つまり、七年間?)男の子として生きてきたわけだし、仕方がないことだとは思うんだけど……
もう少し、自覚を持つべきだと思う。
ヒトラー様然り、フィア然り。
自分の容姿や回りに与える影響を、もう少し理解して欲しいなぁ、なんて。思いながらヒトラー様のクビツェクさんのほうを見た。
「ちょっと見てみたいかも。フィアが女の子だったころの写真とか……」
フィアは聞こえないフリをしている。
「あ、ルカ様なら持ってるかな?」
「!!ちょ、本気で言ってるのか?!」
フィアが焦った。
「いいじゃない。僕は知ってるんだし」
「いや、そういう問題じゃなくて……!」
おおよそ、フィアのことだから、昔の自分の姿をみられたくないんだと思うけれど。
……面白いから見せてもらおうっと。