リレー小説(その六)

□Knight×Laurentia!
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Side フィア






"あの時"の話をすると、クビツェクはしばらく考え込むような顔をしていた。

きっと、ヒトラー様の心を思っていたんだろう。

そして、顔を上げると、言った。

"叱りにいかなくては"と。

俺は微かに笑って、頷いた。





叱る、というのはマイナスばかりではない。

大切に思うからこそ、叱るんだ。

大事だと思うから、怒るんだ。

どうでもいい相手に、叱ったり、怒ったりすることは、ない。

労力の無駄だ。



叱る、といったって。

それはある種の、愛情表現で。

"大丈夫だ"と。

"自分が傍にいる"と。

知らせるための、行動なのかもしれない。



クビツェクは、ヒトラー様のことを人一倍思っているから。

なお伝えたいだろう。

"大丈夫だ"と。

"傍にいるから"と。

"支えるから"と。



……俺も、伝えたいことがある。

"ありがとう"とか。

"ごめんなさい"とか。

何から言っていいのかは、もうよくわからないけれど。





そんなこんなで、クビツェクと一緒に、外に出た。



―― ヒトラー様は、どこにいってしまったんだろう。



魔力を探れども、今の彼の微弱な魔力では、そして俺の今の状態では、うまくさがしだすことができない。

でも、それでも彼の魔力には癖がある。

根気強く二人で探せば、見つかった。

その場所は……

「薔薇園……?」

驚いた顔をするクビツェク。

とりあえず、急いでそちらへ向かう。





ヒトラー様の姿を見つけて、駆け寄りかけた俺たちだが……立ち止まる。



―― ヒトラー様の前に立つ、人物。



見たことのないものだった。

周りには、蝙蝠が飛んでいる。

いったい、何者だ?

ここの騎士団のものでないのだとすれば……



―― ルーズベルトたちの、仲間だろうか。


俺はひとつ息をすって、剣に手をかけつつ、声をかけた。

「何者だ?そこで、何をしている?」

ここは、俺たちの国だ。

国を、仲間を守るのは、俺たちの義務。

とはいえ、表立って攻撃はできないし、する必要はない。

あくまでも、訊ねただけだ。"誰だ"と。




だから、剣には手をかけただけ。

……というのも、半分は建前。

実は、あまり手に力がはいらないから、剣を抜きたくないというのもあった。

剣を振り回してすっぽ抜けるようでは、目も当てられない。

緊張気味に、その人物を、見据えた。





 
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