リレー小説(その六)
□Knight×Laurentia!
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Side アル
ヒトラー様たちに魔術をかけて、様子を見てはフィアの部屋に戻るの繰り返し。
シストさんは、フィアの手を握ったままに眠ってしまっていた。
おこすのもかわいそうだし、と眠ったままにしておく。
―― この人も、本当に心配性。
大丈夫だって、いってるのに。
きっと、すぐに目をさますよ。
さまさせてみせるよ。
「フィアー?」
眠る親友の頬に触れる。
さっきより、少し顔色良くなったかな。
だいぶ、周りにあった悪魔の魔力も消えたし、僕自身の魔力で中和できる範囲では、中和した。
残念ながら、僕が持っている魔力は天使の魔力じゃないから、完全に打ち消してあげることは出来ないけれど。
それでも、少しでも楽になるなら、って。
「早く、おきてね」
無理に叩き起こすつもりはないけれど、それでもやっぱり、早く声を聞きたい。
事情なんか、説明しなくていい。
とにかく声が、聞きたいよ。
男の子にしては高いけど、僕の声よりはやや低い、綺麗な声をね。
そう思って、フィアの頬を撫でていたら……ふっと、フィアの目が開いた。
綺麗な、サファイア色の瞳が、見えた。
「フィア!?」
びっくりして、声をかけたら、まだ意識はないままなのか、ぼんやりとこちらを見て、微かに笑って、口を動かした。
―― "ごめん"。
そのごめんの意味は、図りかねるけど。
よかった……大丈夫、みたいで。
そのままもう一度、目を閉じてしまったけれど、少なからずほっとした。
ヒトラー様たちのほうも、少しずつだけど、回復のしつつあるようだし、後何回か往復したら、僕も少し休憩しよう。
そう思ってフィアの部屋を出ようとしたら、不意に腕を掴まれた。
さっきまで眠っていたシストさんが僕の手を掴んだままじっとこちらを見つめている。
淡い紫色の瞳を、みつめかえした。
「お前まで、がんばりすぎんなよ」
「え」
「本末転倒だからな」
"お前まで倒れたら"といって、シストさんが笑う。
僕は笑顔を返しておいた。
「大丈夫ですよ!」
治癒魔術は、僕が得意とする唯一の魔術。
それでみんなの役に立てるなら、それだけでいい。
今フィアが目をあけたんだ、と言えば、シストさんはほっとした顔をした。
―― もうきっと、大丈夫。
「じゃあ、僕もう一度向こうに戻りますね」
今度こそ、と思ったら、”あ”と声をもらすシストさん。
「……スターリンが来た、かも」
「本当ですか?」
きっと誰かが、連絡を入れたんだろう。
仲間がこの場所に戻ってきた、ということが(戻ってきたって言うのは語弊が生じるかな。彼はもともとこの国の人じゃないし)嬉しい。
"お帰りなさい"って、そういいたいから、僕はなおさら笑顔になって、フィアの病室を後にした。