リレー小説(その八)

□Knight×Laurentia!
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Side アル





ジェイド様に言われて部屋に戻ったけれど……
ハイドリヒさんは、一向に目を覚まさない。


―― どうして?


傷は完全にふさいだ。
魔力も、極力取り除いた。
それに、そもそもそこまで強い魔力を当てられたわけでもなさそうなのに……
それに、あの場にメンゲレさん以外で天使の魔力を有している人は、いなかったのに。
どうして、何だろう。

シストさんも、不安そうな顔をしていた。

こっちに戻ってきてからハイドリヒさんが襲われた時の状況を聞いたけれど、
やっぱり、向こうで話してくれた以上のことは知らないらしくて。

「……どうして、だろうな」

寂しそうに、つぶやいていた。
それは、ハイドリヒさんが目を覚まさないことに対して、じゃなくて……
友人だと言っていたカナリスさんに、彼が攻撃されたことに対する、表情?

シストさんは友達思いだから。
仲間思いだから。
……大切な人を、目の前で失っているから。
余計に、そう思うのかも。







ヒトラー様がきて、彼に連絡が入って。
何か、焦った様子だったけれど。
どうしたのかと聞いても、明確な返事をよこさずに、スターリンさんに聞いてくれ、とのこと。
そのあと、スターリンさんにいろいろ言ってた。

言葉の端々で聞こえた単語や、ヒトラー様の表情。
恐らく、望ましいニュースじゃなかったんだろう。

フィアも呼んでくるように言っていた。
彼も、関係あるなら、間違いなく今度の合同任務のこと。

きっと、何か不都合が起きたんだ。
何か、大変な知らせでも、あったんだ。

そう思うと、堪らなく怖い……







目を覚まさないハイドリヒさんを、みる。
綺麗な金髪を、一度梳いた。

どうして、目を覚ましてくれないんですか?

まるで、目を覚ますことを拒んでいるみたいな、固く閉ざされた瞼。

「ハイドリヒさん……」

小さく、名前を呼ぶ。
根本的な解決にはならないけれど、魔力を、送る。
少しでいいから、力になりたい。
彼が、目を覚ましてくれるように。

戦ってくれなくていい。
今度の任務だって、無理しなくていい。
だけど、とにかく目を覚ましてほしかった。
……大丈夫だって、安心したかった。




と、そのときよく知った魔力が近づいてくるのを、感じた。
二つの、氷の魔力。
スターリンさんと、フィア。

「アル、シスト」

部屋に入ってきたフィアに、ちょっと微笑む。
そんなに長く離れてたわけじゃないのに、久しぶりに見た気がした。

フィアは僕を見て、ふっと笑った後、真剣な顔をして、シストさんを見た。

「シスト、俺も少しスターリンから話を聞いただけだからあまりよくわからないけれど……」

「あぁ、大丈夫だ。俺は、ある程度覚悟できてるぜ」

シストさんはこく、と頷いてスターリンさんの方を見た。

「説明、頼むよ」

僕も、ハイドリヒさんの手を握ったまま、スターリンさんの説明に、耳を傾けた……





 
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