リレー小説(その八)

□Knight×Laurentia!
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side アル







―― いくらなんでもおかしい、とそう思った。



身体の傷は、本当にちゃんと治したんだ。
僕だって、草鹿のヴァーチェ。
中途半端な治療はしないし、何度も何度も、傷の確認もした。

不安点はあくまでもハイドリヒさんが浴びた対立魔力だけ。
対立魔力の影響は、恐ろしい。
それは、よく知っている。

でも、その魔力だって感じる限り微量で……

感じるだけであれば、フィアが以前負った傷よりは少ないはずなのだ。

それだとしたら……目を覚ましても、少しもおかしくないのに……

なのに、ハイドリヒさんは、目を覚まさない。
それが、おかしい。

何が原因なのだろう、とさんざん考えたけれど、答えは見つからない。
こんな事例は、そうそうない。

身体の傷じゃない、としたら……




―― 精神的な、問題……?




僕はその場にいなかったから、何があったのかよくわからない。
わかったのは、シストさんに聞いた話からハイドリヒさんを刺したのがカナリスさんって人だってこと。
対立魔力である天使の魔力を当てられたってこと。
それくらいだ。

僕はカナリスさんについて詳しくは知らないし、そもそもさっきの状況……
ハイドリヒさんが刺された時の状況も、詳しくは知らない。
シストさんも、詳しくは知らないらしいし、何か分かっているのはハイドリヒさん本人だけ、なのだろう。
でも、その本人が目を覚まさないとなると、正直八方ふさがりだ。

僕にできるのは、様子を見続ける事だけ……
何か変わったことが起きないように、傍で見ていること。
対立魔力の影響があるのなら、それを和らげること。
ただ、それだけ。



―― それ以上のことは、できない。



理由がわからない以上、下手なことはできないから。



***



スターリンさんが来てくれて、フィアとシストさんに事情を説明してくれた。
話の断片から推測する限り、何か大変なことがあったのか、任務の危険性が上がったらしい。
フィアもシストさんも、険しい顔つきをしている。

合同任務まで、もう日があまりない。
怪我人も多く出ているし、どういうわけか危険だって増えてる、だなんて。



―― 酷い状況、だな。




そう思うほかなくて。
一人一人が精いっぱいやるほかない、というのはわかるのだけれど、どこまでやれるか、
僕で、僕ごときの力でどこまでやれるかは、甚だ不安で。


……不安ばっかりだ。





 
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