リレー小説(その八)

□Knight×Laurentia!
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Side Al





「はぁ……」

アネットさんをハイドリヒさんの処まで連れていってから、僕は自分の部屋に戻ってきていた。

静かな、静かな、医療棟。
いつも通りなのかもしれないけれど、何だか今日はいつもより静まり返っている気がした。
……多分、気分と今の時間帯とが原因なんだろうけれど。

一人で静かな部屋にいると、色々考えてしまうな、と改めて思った。




―― 色々なことが起こりすぎて、混乱している、のだと思う。




本当に、ここ最近だけで色々。
敵だった人が味方になり、味方だと思っていた人が敵で……
皆、何度も傷ついた。
皆、何度も泣いたと思う。
僕は、皆のために何ができるだろう。

剣術なんてまるっきり出来ない。
攻撃魔術は使えない。
出来るのは防御と治療くらい。

それでいい、と皆は言う。
出来ることを精一杯やれば良い、と。

でも……――

不安、なんだ。
これから先に何か、とても怖いことが起こる気がする、そんな予感。

ムッソリーニさんから届いた任務への増員指示にしてもそう。
メンゲレさんやハイドリヒさんが襲われたのも、そう。

一体何が起きようとしているのか。
僕たちの未来は、一体何処に向かっているのか。
それを考えると、たまらなく怖い。

ずっと、魔獣ばかりを相手にして来た僕らだから、こんな状況にはなれてなくて、
ヒトラー様たち……夜鷲の人たちやカルフィナの人たちに助けられてばかりだ。
僕らも、頑張らなくてはいけないと、覚悟は決まった。

こんなことばかりを考えてもいられないと僕は首を振る。
こういう時にどうしたらいいかは、ジェイド様がいつもいっている。
笑っていなさい、と。
貴方の笑顔で励まされる人間が必ずいるから、と。

そして僕は廊下の方へ視線を投げた。
無論見えるはずはないのだけれど、皆の顔が浮かんだ。

フィアも、ルカ様も、多分ヒトラー様やクビツェクさんたちも、任務へ向かう支度をしているだろう。
ジェイド様も、そしてメンゲレさんも任務にいくと話していた。
怪我をしたハイドリヒさんがどうなるかは分からないけれど……

「……よし、終わらせちゃおう」

僕はそう呟くと机の上に散らばる魔術石を加工して、ブレスレットにする。

"仲間"だと、"友人"だと思った相手に渡す、ブレスレット。
特別な能力はない。
ただ、僕の願いを込めただけの……お守り。

僕は出来上がったそれを抱き締めて、目を閉じる。
そのままに、あることを思い出していた。



―― すべてが終わったら城下の人たちの前で演奏会をしよう。



フィアとヒトラー様は前に話していたらしい。
前にフィアがこっそり教えてくれた。
それが必ず叶うと信じて、僕らは戦うしかない。
何と?何かと。

こんなことお伽噺にしか、聞こえないかもしれない。
でも、願わずにはいられないんだ。

「どうか……――」







 
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