リレー小説(その八)

□Knight×Laurentia!
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side フィア







ヒトラー様から聞いた報告、そしてスターリンの言葉に、継ぐ言葉を失った。

凶悪な魔力をもつ、悪魔。
それも、天使の魔力でさえ有しているという……自然界には存在し得ない、悪魔。

ルーズベルトが悪魔と契約した、というのは前に聞いた。
それも、自分達で作り出した悪魔と。
そして、その悪魔が強大すぎる魔力をもっていたとなれば……
今までの彼の強さも、カナリスによる特殊魔力での攻撃にも納得はいく。



―― それに……



ちら、とスターリンの方を見た。
俺の視線を感じたか彼が俺の方を見て怪訝そうに首をかしげる。
俺は"何でもない"と首を振って彼から視線をはずした。

本人が覚えているかは謎だが、彼は一度ルーズベルトの魔術……
正式に言えば悪魔の魔力で操られて味方に武器を向けたことがある。
あれにも、納得がいく。
簡単な契約であそこまで悪魔の魔力を使いこなせるはずがない。

この間戦ったときのことを思い返す限り、ルーズベルトは悪魔化は出来ないようだけれど……――
スターリンのいう通り、一番恐ろしいのはその悪魔……
『明白なる運命』という名の悪魔が、具現化したとき。

ルーズベルトの言うことをおとなしく聞いている間は、まだいいかもしれない。
あくまで操るのは人間であり、操っている彼ら自身だって滅びたいとは思っていないだろうから。

でも、悪魔は純粋に破壊を望む。
何万人、何億人、否……全ての人間が死のうが、関係ない。
かつて、俺の兄がそうだったように……
自分の目的のためならば何を犠牲にしても問題ないと考えるのが本来の、悪魔らしい気質なのだから。

「厄介なもの作り出しやがって……」

スターリンがそう毒づいた。
ヒトラー様も溜め息を漏らしている。

「万が一本当に戦闘、ということになれば厳しい戦いになるのはまず避けられないだろうな」
「そうですね……」

俺は素直に頷いた。
特殊魔力を持つ者と戦えるのは基本的に特殊魔力を持つ者だけだ。
通常の魔力しか持たない人間が戦うには負担が大きすぎる。

此方の陣営で魔力……特殊魔力を扱えるのは俺とヒトラー様、クビツェク、メンゲレ、ハイドリヒ……
それも、後者二人は無茶させられない。
病み上がりで無茶をすれば体に尋常じゃない負担がかかる。
ジェイド様が許さないだろうし、俺たちだってそんな無謀はしたくない。

「……もう少し、戦える人材が多ければ……」

思わず、そう呟いていた。
否……増やしたところでどうにかなるとは言えないのかもしれないけれど、少しでも無事でいられる可能性が上がるなら。

そう思えど、こちら側であちらと同じように特殊魔力を持つ者を増やすなんて、出来ないししたくない。
ヒトのものでない魔力を持つ苦しみは、俺やヒトラー様が身をもって知っている。
例えその技術があったとしても、無関係の人間にその魔力を持たせようとは思えない。

……俺だって正直、戦わざるを得なくなったとしても、天使の魔力を使って戦うのは、怖い。
以前一度俺は、ヒトラー様と本気で戦って、彼を殺めかけ、仲間たちを巻き込みかけた。
多分、ヒトラー様も同じ心境だろう。
他人を傷つけることを嫌う、優しい人だ、彼は。







 
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