リレー小説(その三)

□Knight×Laurentia!
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Side フィア





ハイドリヒとアイヒマンと向かい合い、剣を向けていた。

前に進もう、

進まなければ。

そう思っていれば。

「フィア!」

ききなれた、高い少年の声。

大切な、親友の声。

駆けつけた、仲間たち。

振り向いて、彼らの姿を見て、俺は思わず目を見開いた。



―― ヒトラー様……?





俺は、純粋に驚いた。

自分以外で、この姿を取れるものは、初めてみた。

いや、彼が悪魔の魔力を持っていることは知っていたのだけれど。




―― 悪魔、というよりは。



俺たちに、天使に近い、その雰囲気。

穏やかで、暖かな雰囲気。

ほっとする。

よかった。彼が、こんな風に、美しい悪魔になれるなら。




―― 仲間として、頼もしい。



アルから感じる魔力がいつもと違うことには、すぐにきづいた。

何が起きたかも、なんとなくだが想像がつく。

アルの普段の魔力で、この長時間を戦い続けられるはずがない。

大方、魔力が尽きた末に、誰かから……ヒトラー様から、魔力を分けてもらったのだろう。

それにしても。



―― アルは、平気なのか。




悪魔の魔力や天使の魔力を体の中に受け入れられるものは、早々いない。

すべてにおいて、特殊なのだ。

魔力の波長も、強さも、属性も。

普通の人間なら、体が持たない。


―― まぁ、理由はあとで考えるとして……



それが今、デメリットに働いているわけでないのなら、それでいい。

俺は、意識を前の二人に戻した。

こいつらを、早くどかして、前に進まなくてはならない。

長期戦も、覚悟の上だ。

最悪、ここは数人で押さえて、残りのメンバーを奥へ。

そんな風に、色々と策略をめぐらせていたというのに。



―― なんなんだ?




この引き際のよさ。

さっきまで、頑強に俺たちの前に立ちはだかっていた人物とは思えない。

"総統命令だから"と、そういっていた。

確かに、ヒトラー様は彼らの上司だった。

だけど、それだけの理由で。

こうもあっさり引くのか?



彼らが言い残したセリフも、不安要素以外の、何者でもない。



でも、気にしていたところでしょうがない。

俺は、ドアを勢いよく開けた。




 
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