リレー小説(その三)

□Knight×Laurentia!
1ページ/2ページ

Side フィア






ルカと一緒にシュペーアのところに向かう。

俺は隣を歩くルカにたずねる。

「お前、傷はいいのか?」

「あ?」

「いや……だいぶ、怪我をしていたようだから」





―― 決して、心配してやってるわけではない。






……と言うふりを装って、俺は訊ねた。


心配しないわけがない。

だって、たった一人の身内なんだから。

たった一人の、家族なんだから。




「……平気だよ。さっき、シャハトとアルにだいぶ治してもらったし。

 心配してくれて、サンキュ」

「……心配は、してない」

そっけなく、言い放つ。

ルカはすべてわかってるという顔をして、笑っていた。

全く。昔から、こういうところは変わっていない。

「……そういえばさ」

ふと、いいにくそうにルカが切り出した。

普段と違う彼の様子に、俺は少し驚く。

「なんだ?」

ちょっと身構えて訊ねれば、ルカはしばし悩んでから、俺のほうを見た。

紅色の瞳が、俺を捉える。



―― 俺と、ぜんぜん違う瞳。




血の繋がりがないと知ったとき、泣いたことを思いだす。

何故今それを思い出したのか、わからないけれど。




ルカは、口を開いた。

「お前、なんかあったか?」

「え?」

きっぱりと尋ねられて、俺はきょとんとする。

なんか、といわれても。

「何のことだ?」



―― 俺は、わからないふりをした。



「誤魔化さないでくれ。俺が、いなかったとき。正式に言えば、この城が竜に襲われる直前だ。

 お前が泣きながら城を飛び出していったって話を聞いたぞ」

予想外の切り出し方に、俺は息を呑んだ。

そして、少し考えてから、発言する。

「……ちょっと、色々あって」

きっかけは、なんだっけ。

あぁ、クビツェクの言葉で、自分自身がいやになったんだった。

挙句、悪魔化までして。

アルに怪我をさせて。



―― 全く、俺は何をしているんだ。



役になんか、立ててないし。

そう思って、また落ち込めば、俺の頭に置かれる、大きな手。

「まぁ、いいんだけどさ……あんまり、一人で思いつめないでくれよ?

 あのときみたいに……俺の手が届かなくなるような場所に、行くなよ。

 ……ほら、ついたぜ」

いうことだけいって、ルカはシュペーアの部屋の前で立ち止まる。

そして、ドアをノックした。




 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ