リレー小説(その三)
□Knight×Laurentia!
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Side アル
ヒトラー様を撫でていると、なんだか酷く妙な気持ちになった。
―― だって。
僕のほうがヒトラー様より年上なのも忘れかけているし、
何より僕は、ヒトラー様よりずっとずっと子供で。
僕の手は、この騎士団の誰よりも小さくて、
僕はこの騎士団の誰よりも、きっと弱くて。
―― それでも。
少しでも、傷をいやすことができるのが、僕にとっての喜びで。
草鹿としてのプライドで。目標で。
僕は。もともと戦闘とかは向いてないし、草鹿に配属されることはよくわかってたから、
僕は僕にできる所為いっぱいをやろうと思ってた。
記憶は得意だから、薬草の名前もたくさん覚えたし、治癒魔術も割りと得意だったし。
だけど、やっぱり心の傷だけは、なおすの難しいから。
でもね。
少しでいい。
力を、優しさを、分けることができれば、と僕は思っているから。
―― だから、ヒトラー様が僕の名を呼んでくれたとき、すごく嬉しかった。
目元を袖でぬぐう彼を止める。
綺麗な空色の瞳。
僕は、この色が大好きだ。
と、そうかと思えば。
ヒトラー様のことを「あーちゃん」と呼ぶ人物。
あーちゃん?
普段、「総統」とか(主に夜鷲やファッショの騎士が呼んでた?)「ヒトラー様」とか(これはディアロ城の騎士だよね)
そう呼ばれているのは見たけれど。
あーちゃんって。
……想像がつかないその呼び方に、僕は思わずきょとんとする。
ヘスと呼ばれた彼は、僕を指さす。
―― え?僕の所為ですか?!
若干あわてれば、ヒトラー様がすぐに苦笑して否定してくれた。
すると、すぐに謝ってくれたヘスさん。
なんだか、にぎやかというか、不思議な人だ。
彼も、夜鷲の騎士かな。
そして、僕が驚いている間に、ヘスさんがヒトラー様を引っぱっていく。
「……嵐みたいな人だな」
僕は思わず、小さくつぶやいた。
追いかけることもないだろう。
あの様子なら、たぶん。ほかの仲間もいるんだろうし。
僕は、どうしようかなぁ……
―― そうだ。
フィアとルカ様の姿もみえないし、部屋に帰って次の戦いに向けて、お守りを作ろう。
魔力をこめて、希望をこめて。