リレー小説(その三)

□Knight×Laurentia!
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Side フィア






ヘスは完全にスルーの方角で、シュペーアがヒトラー様に声をかける。

すさまじく眠そうだ。

まぁ、疲れているんだろうし……仕方あるまい。

と、思っていたら、シュペーアにヒトラー様を部屋まで送るよう頼まれた。



―― 頭を下げるほどのことでもないのに。



俺は普通に承諾する。

彼も思っていることだと思うが、この状態のヒトラー様を一人で歩かせるのは、色々と問題がある。

さっきのアルのようになる誰かが出るかもしれないし、

それより恐ろしいのは、ヒトラー様が妙な目にあいそうだということだ。

それを防げるのなら、喜んで力になろう。

それに……この場では俺が一番無難だしな。

















とりあえず、ヒトラー様を抱きかかえるような形で部屋へ向かう。

ヒトラー様が華奢で助かった。

俺はこれでも一応女だ。

軽々と人一人を抱えて歩けるほどの力はない。


―― それにしても。


逆に、軽すぎはしないだろうか。

少々、心配になる。

俺自身も、よくシストやルカに心配されることなのだが、あまりに華奢で。

そんなことを考えている自分が、なんだかおかしかった。



―― なんだか、最近アルに似てきたかな……













何とか部屋にたどり着いて、俺は彼を椅子に座らせた。

相変わらずに眠そうなヒトラー様。大丈夫か、この人は。本当に一人で帰らせなくてよかった。

「ヒトラー様、化粧おとすまではちゃんとおきていていただけると助かります」

さすがに、眠っている人間を支えつつ化粧をおとすのは至難の業だ。

俺が声をかければ、一応聞こえているらしく、小さく頷く。

そっと彼に施された化粧を落としていく。

よくもまぁ、ここまでしっかりと化粧したものだ。

「こんなことせずとも、十分に綺麗なのにな」

思わず、俺はつぶやく。


―― きっと、ヒトラー様のご両親も、綺麗な方だったんだろうな……


俺自身が聞きたくないから、あまり家族の話しはしないのだけれど、ふとそう思った。

俺は、どっちの親に似たんだろう。

考えても、答えが出るはずはない。俺は、両親の顔を知らないのだから。

そう考えると、少し悲しくなった。

「……フィア?」

俺の手が止まったことを不思議に思ったのか、相変わらずに少し寝ぼけた声で、ヒトラー様が尋ねた。

俺ははっとして首をふると、ヒトラー様の化粧をおとす作業に戻った。



 
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