リレー小説(その五)

□Knight×Laurentia!
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Side フィア





謝ることしかできず、べそべそと泣いていたら、ヒトラー様に謝られてしまった。




―― 貴方が悪いんじゃないんです……!




いつもこうだ。

ヒトラー様が悪いわけじゃないのに。

俺が泣くから、彼は自分の所為だと思ってしまって。

もう、情けない。


―― 泣くな、男だろう?


ルカが、叔父上によく言われていたな、と思いだす。

騎士になろうと決意したばかりのころ、俺はこれを合言葉のように唱えていた。



怖い夢を見て目を覚ましたとき、魔術に失敗して怪我をしたとき。

大嫌いな雷が鳴っているときも。

必死に必死に唱えてきた合言葉。



―― 泣くな。泣くな。



でも、今はそれも無効らしい。

困ったな。俺は、ひどく泣き虫になってしまった。






ヒトラー様の目を見る。

俺と同じ、青い瞳。

俺より綺麗な、青い瞳。

まだ、苦しそうなのに、俺の名を呼んで、俺に謝る、彼。





その手が、そっと俺の頭を撫でた。

包帯を巻かれた、痛々しい手。

その手を見ていれば、先ほどのことを思い出して、申し訳なさでいっぱいになる。



―― でも。




優しい手。

温かい手。

すがりたくなってしまう。

夢で、俺を撫でていたあの手のように。

優しくて、暖かくて。






その手が離れたとき、名残惜しいと感じてしまうほど。

この人は、本当に不思議な力をもっている……




どうして、ここまで周りを心配できるんだろう。

どうして、ここまで自分を考えずに行動できるんだろう。

……本当に。この人のほうがよほど天使だよな……



 
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