リレー小説(その五)

□Knight×Laurentia!
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Side フィア








ジェイド様にベッドに戻されて、俺はただぼんやりしていた。

騎士になってから、おとなしくしていることといったら、本を読んでいる間くらいだったから、

ベッドに縛られているなんて、真っ平ごめんなのだけれど。




ふと隣に視線を移せば、眠っているヒトラー様。

その様子を見て、ふっと笑う。



―― おこす必要はないな。



こんな穏やかに眠っているのなら。


その表情は穏やかで、うなされている様子はない。

だったら、ゆっくり眠っていて欲しい。

穏やかで、暖かい夢の中に、いて欲しい。








ジェイド様が換気のためにあけて言ったのであろう窓から風が入ってきた。

ふわりと、俺の髪を揺らして。

俺は、短い自分の髪をそっと撫で付けた。

「少し伸びたな……」

首の後ろで軽く縛れるくらいの長さになっている。

切らなければ、と小さくつぶやいて、手を離した。

そっと、目を閉じる。








『本気で切るのか?』

懐かしい、過去の声が聞こえた。

はさみを手にしているのは、俺の従兄だった。

騎士になる前の俺は、今のシストより……ジェイド様より、髪が長かった。

だけど、男として騎士にならなければならないとわかったとき、俺はルカにはさみを渡した。

『切る。切ってくれ』

迷いなくそういえたかどうかは、わからない。


―― 髪の毛は女の子の魅力だからね。


そう母親に言われて、髪を大事にしていたのは事実だし。

『だけど、もったいないよ。せっかくこんなに綺麗伸びてるのにさぁ』

ルカは髪の長い女性が好みなのだろうか?俺が髪を切るのにやたら反対した記憶がある。

『煩い。さっさと切れよ馬鹿』

『口悪いなぁ……わかったよ』

ルカは、そのあと俺の髪を切った。

肩にもつかない長さになった髪をそっとかき上げれば、自分の中で覚悟が決まった気がした。



今のシストのように髪を結んで任務をすることだって、きっと可能ではあったけれど、こんな性格とはいえ、一応女なんだ。

多少でも、見た目も"男"に近づけなければならない。

……髪を切った今でも、"女顔"といわれてしまうのだから、髪を伸ばしたらおそらく女にしか見えないだろう。




 
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