リレー小説(その五)

□Knight×Laurentia!
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Side フィア







……少し、笑いすぎただろうか。

ヒトラー様が完全にすねてしまった。

しかし……なんというか、まぁ、その表情もかわいらしい。

そんなことを言っているから彼が照れてしまったのはわかっているけれど、

本当に、かわいらしいのだ。彼は。



―― 本当に、不思議なヒトだ。




笑いすぎてにじんでいた涙をそっと指先でぬぐって、思う。




ヒトラー様は、威厳があって、周りをまとめるのが上手くて、

それでいてどこか脆くて。

だけど、こうして笑っているときや、すねているときはやたら子供っぽくて。




つかみどころがない、というのかな。

否、いい意味で、なんだけど。

かかわればかかわるほど、わからなくなってくる、彼という人物。

わからない、だからこそ。


―― 知りたいと、思うようになるのかな。


優しさの意味を。

脆さの意味でさえも。





今まで、彼にかかわってきた人間が彼に惹かれるのは、

こういった彼の一面を知っていくからじゃないだろうか?

強いのに弱くて、優しくてもろい人って言うのは、無条件に守りたくなるというか。


……またこんなこといったら、ヒトラー様に怒られてしまうだろうか?




クビツェクがボーっとしているから、心配になって声をかけた。

どうやら、ヒトラー様のことを考えていたようで。

思わず、表情が緩む。




真っ赤な顔で本を見ている(読んでいるんじゃなくて、見ている)ヒトラー様に謝っているクビツェク。

ヒトラー様もしゅんとしている。



―― 何だ、あの小動物。




あんな顔をする人がここにももう一人いたよ、全く。

こういうときは、ちょっぴりアルに似ていると思う。

しゃべっているヒトラー様とクビツェクを見て、一つ溜息。

邪魔するのも野暮だな、と思って俺は二人を傍観していた。



 
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