リレー小説(その六)

□Knight×Laurentia!
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Side アル






「……はぁ」

フィアからの話を聞いて、ひとつ息をつく。

クビツェクさんとフィアは、ヒトラー様を探しに行ってしまった。



―― なんだかんだで、僕らには何にもできないんだなぁ……



そう痛感して、思わずため息が漏れた。





守りたいと思っても、助けたいと思っても、その思いには限界があって。

やっぱり、力がなければ、守ることができない。

フィアの力も、ヒトラー様の力も、強い。

フィアは天使で。

ヒトラー様は悪魔で。

僕や、シュペーアさんたちでは、どう足掻いても止められない

"止めたい"という思いはあっても、力が及ばない。

それはやっぱり、ひどく悔しくて。





「まったく……どうして、あいつはああかねぇ……」

ルカ様が、小さくつぶやいた。

「何のことですか?」

僕が尋ねると、ルカ様は苦笑して、言った。

「ヒトラーのことだよ。

 もともとここの騎士団のやつじゃないし、ほぼ部外者の俺が言うことじゃねぇかもしれないけどさ……

 ここのやつらって、馬鹿じゃん?」

いきなり何を言うかと思えば。

僕は思わず、笑う。

でも、そうだな。

確かに、馬鹿かもしれない。

たぶん、彼が言わんとしてることと、僕らが思ってることはおんなじで。

ルカ様は、シュペーアさんたちを見て、微かに笑った。



「馬鹿で、何にも考えてないから、回りに迷惑ばっかりかけてるけどさ……?

 その分、誇れるものもあるわけじゃん。

 絶対に、仲間のことは守りたいとか、力になりたいって思いとかさ」


それは僕も、そう思う。

僕たちはひどく無力だし、"オリジナル"のヒトラー様たちのことは、知らない。

だけど、それを知っても、知らなくても、"仲間だ"と思う気持ちは、変わらないよ。

守りたいと思う気持ちは、変わらない。

それだけは、伝わって欲しいな。

ディアロ城騎士団の、団員としての。


―― ひとつの、望み。



ルカ様は、微かに笑みを浮かべたままに、言う。

「ヒトラー含め、お前らに、感謝してるんだ。

 お前らのおかげで、俺の大事な家族がよく笑うように、泣く様になった。

 その御礼ってわけじゃないけどさ、少しくらい力になりたいって思うわけだよ。

 ……クビツェクや、シュペーアやゲーリングたちみたいに、ずっとあいつの傍にいたわけじゃないから、

 こんなことを言うのはおこがましいかもしれないけど……

 それでもやっぱり、俺たちももう少し頼ってもらえたら、って思うよ」

そのあとで微かに苦笑して、"らしくねぇ説教は苦手だ"といってから、ルカ様はそっと視線を外した。



 
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