リレー小説(その七)
□Knight×Laurentia!
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Side シスト
クビツェクがアネットの傷を治す。
……というか、冗談抜きに、すさまじく痛そうなんだけど。
普通の人間なら、身動きとろうと思わないだろ?
というより、それ以前の問題に……見ているこっちが痛い。
フィアも同じらしく、さりげなく目を逸らしていた。
でも、まぁ……アルがいない状態で、応急処置程度でもしてくれる人間がいたのには、助かった。
―― ただ、悪いことをしちまったな……
クビツェクもヒトラー様も魔力で戦いっぱなしだったから、疲れているだろうに。
でも、助かったのは事実だ。
泥だらけ、煤だらけの包帯巻きつけた状態で、あんな傷を放置してたんだ。
何もしないで放っておいたら、真剣に後が怖い。失明したらどうするんだよ。
そんなわけで、アネットに処置をしてから、クビツェクは俺の肩の傷も診てくれた。
……正直に言えば、痛いなんてもんじゃない。
たいてい、傷を癒す魔力は、本来の傷の痛みより大きいっていうけど、これは正直、そんな比じゃなかった。
痛みには強い方だと自負している俺でさえも、思わず声を上げたほどだから。
普段、アル達が使う魔術にはあまり痛みが伴わない。
というのも、あいつらがそう言う魔術の専門家だしな……
なんか、傷を癒すと同時に局部麻酔がどうのこうの、という話をしていた。気がする。
でも、助かったな。
俺はもう一度クビツェクに礼を言った。
と、言うか。アネットの反応には驚いた。
クビツェクが痛くなかったのかと尋ねれば、あっけらかんとかえってきた返事。
「痛くなかった、って……」
「あぁ、少しもいたくなかったぜ」
キョトンとするアネット。
クビツェクの魔術のおかげで出血は止まっているけど、とりあえずおとなしくしていろとフィアに言われ、おとなしくしている。
「……お前、まじめに大丈夫か?」
真剣に、心配になる。
右目、見えなくなってたらどうする気だ、こいつ。
「平気だって。たぶん、痛みもマヒするくらいマジだったってだけだよ。
もともと血の気は多い方なんだ。多少減ったところで問題ないない」
「そういう冗談を言っている場合か、お前は」
フィアが肘でアネットを小突く。アネットはそんなフィアを見て、申し訳なさそうな顔をした。
「いや、俺は全然平気なんだけどな……フィアが、大丈夫か?手……」
アネットの剣に触って火傷したからだろう。
こいつも大概馬鹿だ。
他人の魔術剣に無断で触れない、殊に、自分が苦手とする魔力を持つものなら、なおさら。
それは、騎士としての鉄則だぞ。
「……別に、平気だ。これくらい慣れている」
そういって、フィアは目を逸らした。けど、微かに震えてる。
「……そういや、お前……」
「いうな。自分が情けなくなる」
―― 炎、苦手だったよな。
続けようとした言葉は、本人にかき消された。
まったく、意地っ張りなんだから。
「……ん……?」
ヒトラー様が顔を上げる。
「……チャーチルの魔力が、消えましたね」
フィアも気づいたらしく、そうつぶやいた。そして、微かに笑みを浮かべながら、言う。
「とりあえず……帰りましょうか?二人も、疲れたでしょうし、ここの馬鹿二人をちゃんと治療してやらなきゃいけないですし」
「「お前もだ、バカ」」
アネットと台詞が重なった。
……まぁ、とりあえずそうだな。
外で突っ立っていても、どうしようもない。
室内に入るのが賢明だろう。
おそらく、まだ外にいるであろう人間も、すぐに戻ってくるだろうし……