リレー小説(その七)

□Knight×Laurentia!
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Side フィア






―― 驚いた。



目を覚ましたスターリンに睨まれて、思わずその場に凍りついた。

それほどまでに、鋭い視線だった。

まぁ、当然と言えば、当然か……

「何だか、すまないことをしてしまったな……」

さっきの会話の流れからくめば、こうなることは読み切れていたのに。

思わず苦笑い。

そして、ちょっと泣きそうになっているアルを撫でる。

大よそ、アルもびっくりしたんだろう。

あいつこそ、純粋な善意でやったんだから。

「そんな顔をするな。スターリンもびっくりしただけだから」

子供をなだめるように言えば、アルは小さくうなずいた。

「僕が悪いんだってことは、わかってるんだ……でも、びっくりしちゃって」

そういって困ったように笑うアル。

こういう素直なところがアルの美点だ。







「仕方ないといえばそれまでだろうな……」

ヒトラー様が呟くように言う。

背中を取られることは、致命的だろうから。

「アネットみたいに人の背中からとびかかって押し倒すのが趣味の奴は気を付けるべきだな」

少しでも空気を軽くしたくて、俺が言うと、アネットが明らかにむっとした。

「あれは、わざとじゃねえ」

「なら、尚更だ。

 いきなり後ろからつき転ばされる側の立場になってくれ」

あれは、だいぶ恐怖だ。

誰だって警戒して魔力を放ちたくなる。

今までアネットがけがをしていないのが不思議なくらいだ。

「気をつけろ、という話だ。お前はさすがに注意力散漫すぎる」

「へいへい。わかりましたよー」

べ、と舌を出しながら、アネットが言う。

……この返事じゃ、本当に分かっているかどうか、はなはだ怪しい。








それにしても。

「ジェイド様……」

この人は、本当にすごいと思う。

こんなに華奢で(ちらりと見ただけだったら、こちらの方が病人なんじゃないかと思うような見た目なのに)この力だ。

無論、魔力のおかげもあるだろうけど。

「まったく……ここまで無茶をする人間となると、心配以外の何物でもありませんね。

 本当は、魔力で無理やり眠らせるのは気が進まないのですが。

 ただ、あのまま放っておいたら本気でマリティンに行きかねませんからね……」

ため息交じりにジェイド様が言う。

もう一度ベッドにスターリンを寝かせて、布団を直しながら、小さく呟いた。

「……気持ちは、わからないでもないんですがね……」

……きっと、そうだろう。

リーダーとして、自分の国を心配するのは当然のこと。

ただ、それと自分の体調とを天秤にかけた時、どうするかという話だ。

ジェイド様は、スターリンの身体を心配して、行くのをとめた。

ただ、それだけの話。




 
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