リレー小説(その七)
□Knight×Laurentia!
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Side フィア
予測不能の事態。
……これから、どうするべきなんだ。
視線を移せば、東条様に抱きしめられたまま、無邪気に笑うスターリンの姿。
……これじゃあ、指揮はおろか、騎士の仕事もできない。
此処を襲われた場合、戦うこともできないだろう。
こうして笑っているスターリンを、このまま笑ったままにしておいてやりたいとは、思う。
記憶が戻らなかったとしても、スターリンはスターリンだ。
それはそう思う。
―― だけど……
このままにしておけば、至る所で歪みが生じる。
マリティンはどうなる?
向こうに向かった、クオン様とアンバー様は。
スターリンの記憶は、戻るのか……?
ヒトラー様に問われ、俺は思案する。
確かに、連絡すれば、クオン様たちも動揺するだろう。
でも、連絡しなければ……
それこそきっと、動揺する。
どうなっているのかと心配して、無理にでも戻ってきかねない。
そうすれば、無駄な魔力と体力を使う。
それだけは……防がなければならない。
最善がわからない。
どうすればいいのかも、わからない。
俺はしばし悩んでから、答えた。
「……一応、クオン様たちには連絡を入れます。そのうえでどうするか、クオン様たちに判断してもらいましょう」
彼らだって、この騎士団のトップ。
ちょっとやそっとで動揺して、動けなくなるとは思えない。
「まぁ、判断も何も……ボリシェビキの騎士と協力して、動いていただくほか、ありませんけど……」
申し訳ないが、俺にできることはない。
固く、拳を握った。
爪が食い込んで、手のひらに三日月形の傷を残す。
通信機を手に取って、クオン様に連絡を入れる。
「……クオン、様……」
『フィアか?どうした?スターリンが目を覚ましたか?』
クオン様の声ではなく、スターリンの声だ。おそらく、もう変身しているのだろう。
言葉を選びつつ、彼に伝える。
「……さましたには覚ましました。ですが……」
『……どうした?歯切れ悪い返事だな』
クオン様の……否、スターリンの声のトーンが下がる。
「……ちょっと、トラブルがあって……」
『トラブル?』
事情を説明しようとするも、俺の言葉が支離滅裂すぎて、クオン様には理解できていない様子だ。
ヒトラー様が見かねて、途中で変わってくれた。
―― これから、どうなる。
俺はどうする?
クオン様たちは、どうするんだろう……?