お話

□大空へ
1ページ/3ページ

S級試験も迫ったある日の朝、レビィはギルドへの道を一人歩いていた。
朝一番で湖に行っていたのだ。落ち込んだ時や元気が出ない時には、湖に鳥を見に行く。
中でも、冬のこの時期に飛来してきている白鳥が、レビィの一番のお気に入りだった。
(今日も白鳥たち、きれいだったなぁ)
列を成して飛び立つ様を見ていると、不思議と元気が沸いてくるのだ。
その日、前を歩いている二人連れに気付き、レビィの心は一気に高揚し、思わず駆け寄って行った。
「ガジル!リリー!おはよう。ずいぶん早いんだね」
二人は足音に気付いていたのか、驚いた風もなく答える。
「おぅ」
「レビィこそ、ずいぶん早いのではないか?」
二人に並ぶと、歩きながら楽しそうに言う。
「うん、湖に白鳥を見に行ってたんだ」
「ハクチョウ?」
いぶかしげなリリーに、レビィが説明をする。
「白くて、大きくて、とってもきれいな鳥だよ。エドラスにはいないの?」
どうやらリリーは見たことがないらしい。
「そういやあっちじゃ、ヘンな生き物しか見なかったな」
ガジルも思い出しながら言った。
「そうなの?じゃ、二人とも明日一緒に見に行かない?」
思わず言ってしまった言葉に、たちまちレビィの顔が朱に染まる。それに目ざとく気付いたリリーは、気を利かせて言った。
「おれは遠慮しておこう。ガジル、行って来てはどうだ?」
「---そうだな、リリーがそう言うんなら行ってやるか」
相変わらずの態度と物言いには苦笑いのレビィだが、気が変わらぬうちに急いで言う。
「ホント!じゃ、あした日の出くらいに湖でね!」
ちょうどギルドに着いたところで二人と別れ、レビィはカウンターへと弾む足取りで向かった。
「おはようミラ!」
「レビィ、早いのね。何だかいいことあったみたいね」
「えっ!?べ、別にいつもと同じだよ」
そうは言ってみたものの、緩んでくる頬はどうにも隠せていなかった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ