お話

□夢幻
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ある日の夜遅く、ガジルは家へ帰るなりすぐさまソファにその身を投げ出した。
(フン、さすがに今日の仕事は体力使っちまったか)
マスタージョゼはこの所、ガジルとエレメント4に荒っぽい仕事をさせる。
意図的になのかは分からないが、もともと好戦的なガジルにとっては、悪くない仕事だった。
その日も、オラシオンセイスの傘下だという闇ギルドを2つほど壊滅させてきた。
だがさすがのガジルも疲れが出たのか、窓から射す月明かりを眺めているうちに、いつの間にか眠りに引き込まれて行った。


<…ジル、…ガジル>
どこからか聞こえてくる懐かしい声、それはかつて一緒に暮らした竜のものに違いなかった。はっとして起き上がる。
「メタリカーナか!?」
辺りを見回してみるが、射していたはずの月明かりは無く、一面闇の中だ。
<元気そうだな、ガジル>
声はすぐ傍らから聞こえるものの、メタリカーナの姿はどこにも見えない。
「どこにいンだよ、姿ぐれェ見せろよ!」
<相変わらずだな、そう逸るな>
苛立つガジルとは対照的に、メタリカーナの声は穏やかで、どこか楽しげにも聞こえる。
「突然居なくなったと思ったら、何やってンだよ」
闇に向かって尋ねる。
<少しは強くなったのか>
「当たり前だ、その辺の魔道士にゃ負けねェよ。何たって滅竜魔道士だからな」
ギヒッと物騒な笑みを浮かべ、胸を張る。
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