お話

□翡翠
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「さっきから難しい顔しっぱなしだよ。少し休憩したら?」
顔を上げると、ルーシィの心配そうな瞳が覗き込んでいた。
それへと笑顔で返事をする。
「ありがと、大丈夫だよ!」
ギルドの片隅のテーブルを陣取って、レビィは古文書解読のクエスト中だ。
これがなかなか複雑で、さすがのレビィも苦戦をしていた。
「もうちょっとで進みそうなの」
そう言うと、再び本のページを捲る。傍らには、地下の図書室から持ってきた本が、
山のように積んである。
その様子を見て、ルーシィも苦笑しつつナツ達の所へ戻っていった。
カウンターで食事中のガジルは、一連の流れを見るともなく見ながら、思わずつぶやいた。
「ありゃあ、たいした集中力だな…」
それを聞き、隣にいたリリーが思わず食事の手を止める。
(ほぅ、食べながらも気になっているとはな)
普段のガジルは、食事中に他の事に気を取られることなど滅多にない。
それだけに、その様子はリリーの気持ちを和ませた。
「そう言えば、ガジル」
リリーは何気ない風を装って、水を向けてみた。
「先ほど見かけた鳥は、何と言う名前か知っているのか?」
つい先刻、クエスト帰りに通った川辺で、ガジルは一羽の鳥に目が行き、気が付けば立ち止って眺めていた。
「…いや、知らねェ」
それどころか、なぜその鳥に目が行ったのか、理由も良く解っていなかった。
「ならば、知っていそうな人物に聞いてみてはどうだ?ちょうど気分転換も必要なようだ」
レビィの方に視線を向けながら言った。
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