三空ラバーズに39のお題

□01.初めての日
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テク、テク、テク。
ザッ、ザッ、ザッ。
まさにそんな効果音が適切な、二人の足音。
前を悟空が進み、その後ろ姿を三蔵が追いかける。
悟空はときどきチラリと後ろを振り返って三蔵がちゃんといるかどうかを確かめて、その度に嬉しそうに微笑むのだった。
寺院からは裏にあたるこの山に、二人で歩み入る。





それは、突然三蔵がキレだしたことから始まった。

『こんなことやってられるかっ!おい、猿!寺の奴らに見付からない場所に連れて行けっ!!』

そう言われて、悟空が断るはずがない。
いや、内心大喜びで三蔵の腕を引いた。
そして、二人で裏山に入る。
ここは悟空の一番の遊び場であり、昼の時間の大半を過ごす場所でもあった。
生い茂る木々をくぐり、湿った土を踏みしめる。
木々の隙間から差し込む木漏れ日に時々目を細めながら、悟空はどんどん裏山の奥へと進んでいく。





進んで進んで、開けた場所に辿り着く。
そこだけポッカリと開けたように、木が周りを取り囲む。
柔らかな草が生え揃い、踏み込めば足の裏にサクッと草の感触が伝わってくる。
この裏山で一番の、悟空の気に入りの場所。

「ここなら………ゆっくり出来る?」
「まあ、悪くないな」

悟空よりも一歩踏み出して、三蔵は木の根が地面から出ている場所へと腰を下ろした。
木々の間から降り注ぐ木漏れ日が、強い太陽の光をちょうど良い加減に遮ってくれている。
三蔵はここまで小脇に抱えてきた新聞を広げ、太い木の幹へと背中を寄りかからせた。
三蔵がこの場所を気に入ったのだと悟った悟空は嬉しさに顔を緩め、そして三蔵の側へとストンと腰を下ろす。
三蔵よりも低い位置。
新聞を読む三蔵の横顔を見上げる形。
三蔵を独り占めできる、この空間。
少しだけ、思う。
今の状況が、出来るだけ長くありますように。





 
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