三空ラバーズに39のお題
□03.明日またね
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「うん、じゃあ明日またね」
そう言って、携帯電話の終話ボタンを押す。
しばらく携帯画面を眺めてから、折りたたみ式の携帯を閉じてベッドの上にポンッと放った。
そしてその携帯の横に、自分もボスッとダイブする。
布団に埋めていた顔を横に向けて、視線の先にあった携帯に手を伸ばした。
携帯を開いてボタンを押すと、そこには着信履歴。
その名前は、『玄奘三蔵』。
「あ〜あ………」
溜め息雑じりの声を出して、悟空は携帯を握り締めながら仰向けに寝返りをうった。
携帯画面を眺めていても、電話が繋がるわけでもない。
携帯画面を眺めていても、その人に会えるわけでもない。
けれども、今唯一の連絡手段である携帯を眺めているだけで、どこか繋がっているように思う。
「会いたいな〜……」
呟いてみる。
もう何日会っていないだろうか。
もともとこちらは高校生であちらは社会人。
生活の場所もリズムも違えば、容易に会うこともできない。
唯一の連絡手段である携帯での会話も、しゃべっている時は楽しいけれども終わってしまえばむしょうに寂しくなってしまう。
むしょうに、会いたくなってしまう。
「明日、か………」
またその声を聞けるのも明日までお預け。
また朝になったら学校もあるしあっちは仕事もあるし、そんなに遅くまで話すこともできない。
それでもまた電話をかけたくなってしまうのは、ワガママなことだろうか。
「…………もう、寝よ」
起きていてもグルグルと考えてしまうだけだ。
そう思ってベッドから起き上がり、電気を消そうとしたそのとき。
♪〜〜♪〜〜♪〜〜
聞こえてきた着信メロディーに、電灯のスイッチに伸ばしかけた手を止めた。
この着信メロディーは、一人しかいない。
なぜ、と思う間もなくすぐにベッドに歩み寄って携帯を開くと、そこに出ていた名前は見慣れたものだった。
『玄奘三蔵』
一つ唾を飲み込むと、通話ボタンを押して携帯を耳に押し当てた。
「も、もしもし……三蔵?」
『まだ起きてたか?』
その声は、つい先ほどまで聞いていた声で。
「どうしたの?何かあった?」
『どうしてそう思う?』
「だって……さっき、"また明日”って言ったばっかりだからさ」
そう言った瞬間、外から聞こえてきたクラクションの音。
電話越しにも聞こえてきたクラクションの音。
「え……?」
そんなことはない、と思いながらも、道路に面したほうの窓に近づいて、そこから外を見下ろした。
「なん…で………」
そこにいたのは、車に体を寄りかからせてこちらを見上げる、三蔵の姿。
携帯を耳に当てながら、こちらを見上げてどこか楽しげに笑っている。
『一応、"明日”だぞ?』
言われてベッド近くにある目覚まし時計を見てみれば、時刻は真夜中0時10分。