三空ラバーズに39のお題

□04.きんいろのひと
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長安の街に下りて買ってもらった、折り紙。
透明なフィルムに包まれたソレを開けてみると、中にはたくさんの色の折り紙が入っている。
最初にあったのは赤。
そして青や黄色、緑、水色、桃色などなど。
それらの色は何枚かずつ入っていて、床に広げてみるとまるで色鮮やかな扇のよう。

赤から始まって、最後の色。

それは、光に反射する金色。






「う〜ん…………」

折り紙を床に広げて、悟空は腕を組んだまま唸った。
寝室兼遊び場のような部屋のフローリングの上、あぐらを掻いて首を傾げる。
見つめる先には、金色の折り紙が一枚。

(金色………だよな)

床から金色の折り紙を手にとって、ヒラヒラと揺らしてみる。
表面の金色は窓からわずかに差し込んでいる太陽の光を反射させて、どこか鈍く光っている。
折り紙が入っていたフィルムの裏面に入っている色すべてが書いてあり、その中に最後、確かに『金色』の文字があった。

けれど、どこか納得できない。

(でも何色かって聞かれたら金色だし………。でも、な〜んか違うんだよな………)

自分でも考えていることがわからない。

金色だけど、金色じゃない。
金色じゃないけど、金色。

なんだか、頭の中がグルグルと混乱している。
たった一枚の折り紙のせいで。

(他の色は納得できるのにな………)

赤は赤だ。
青は青だ。
緑は緑だ。

けれど、なんだか金色は違う。

折り紙を再び床に置いて、また腕を組む。
少し俯き加減に目を閉じて、考えてみる。


金色だけど、金色じゃない。
じゃあ、なんでそう思うのか?



何の金色と、比べてるの?



「あ、そうか…………」

気付いてしまえば、単純明快。
なんでこんなに悩んでいたのかもわからないくらいに、すっきりと答えが出てきた。

金色だけど、金色じゃない。
金色じゃないけど、金色。


じゃあ、ホントウの金色は?
目に見える色だけじゃない、眩しい金色はナニ?



そう考えると、なんだか無性にジッとしていられなくなった。
なんだか無性に、会いたくなった。



勢いよく立ち上がると、その風で折り紙が何枚か床から浮かび上がって引っくり返る。
引っくり返ってしまえば、ただの白。

でも、ホンモノは白になんてならない。

そのまま、部屋の扉を開いて抜け出した。
また、折り紙が床を浮き上がっていった。







廊下を、パタパタと急ぎ足で歩く。
だんだん、近付いていく。
だんだん、会いたい気持ちも膨らんでいく。



執務室の、前。
この扉を開ければ、会える。
ノックもしないで、そっとドアノブを回す。
開いた扉の先には、やっぱりその人がいて。

「なんだ?」

聞きなれた、声。
机に向かっていた顔が、こちらに向く。
執務室にも差し込んでいる日の光が、わずかにその人にも差し込んでいて。


「ううん、ただ、会いたくなった」


ほら、ホンモノはさ

いつもすぐ側にいる、あなたの色なんだ。




END.

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