三空ラバーズに39のお題

□06.鋭利な刃物
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なんつーの?
そうそう、なんか鋭い感じでさ。

周りのモノ、みんな敵って感じ?
触れるとそこから刺されて、でも刺してる本人気付いてなくって。

あ、そうそう、まるで。





「鋭利な刃物、みたいだな」
「あ?」

思った瞬間、声に出していた。
それはこの部屋にいるもう一人の存在にもバッチリ聞こえていて、怪訝な顔をして新聞から顔を上げてこちらを見ていた。
ヤバッと思いつつもこの状況を回避してくれそうな他のメンバーは、ただいま買い出し真っ最中で。
自分で回避するしかない、と思いつつもなんだか避けられそうになく、正直に思ったままを伝えようと思った。

「いや、お前がさ。なんつーか、雰囲気?鋭い刃物みたいだなって思ったら、つい口に出ててさ」
「……………ふん、くだらんな」

会話のお相手は、まさに予想したとおりの返事を返してきて。
それがなんだか可笑しくて、わずかに口元が緩んでしまう。
目の前の男は、再び新聞に視線を落とした。







出会ってから、けっこうな月日が経っていると思う。
金髪で煙草も吸って酒も飲む最高僧のイメージは、当初会ったときから変わってないと思う。

鋭い、切れ味の良い刃。

鋭い視線に、人を寄せ付けない鋭い雰囲気。
まさに、鋭利な刃だ。

目の前の男を、煙草の灰を落とすついでに盗み見する。
やはり人を邪険する雰囲気は相変わらず。
顔だけはいい最高僧は、黙っていれば女が寄ってくるというよりも、黙っていても鋭い雰囲気に普通の女ならば遠慮したいところだろう。
普通の人間も、一発睨まれれば近付こうとしないだろう。

そこまで考えて、ふと思う。

なんだか久しぶりに、そんな風に感じた気がした。
つい先ほど、4人でいたときにはそんなことなど思いもしなかった。
こうして2人になった途端、感じたことだ。

はてさて、そんなに俺のことが嫌いですかね、と思う。
まあわざわざ男に好かれようとは思わないし、好きとか嫌いとか言うよりも、この旅の間は嫌でもお付き合いしていかなければならないのだから、仕方ない。
まあ、長いお付き合いで慣れた鋭い視線にも、もう少しお付き合いしていきましょうか。



 
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